最終年度は、組織による支援の知覚とキャリア形成の主体性の関係について日米比較を行った論文を一本作成した。本論文によって、キャリアの形成における主体性がmalleabilityを備えた概念であること、malleabilityに日米差があり、アメリカにおいては増大する方向にmalleabilityが高く日本においては縮小する方向にmalleabilityが高いことが明らかとなった。海外ジャーナルへの投稿、受理までは間に合わなかったが、作成を終えており投稿を控えている状態である。 補助期間全体を通じて、キャリア形成の主体性に対する組織要因の影響の検討を行ってきた。特に、キャリア形成における主体性については、改めてその概念定義やその先行要因、結果について注目が高まっている。補助を受けて海外での学会発表なども行ったことで、キャリアの主体性についての検討を進めることができた。 キャリアの主体性とは、キャリアについてのコントロールを広げようとすることであると定義できる。そして、これは従来のキャリア研究において十分には議論されてこなかったことである。キャリアの主体性概念を定義することによって、キャリア形成への関心の低下といった、これまで説明することが困難であった現象を説明することができるようになると期待できる。また組織が個人の主体性を損なうことなくキャリア形成を支援する方法についても検討が可能となる。 以上、本補助期間において、キャリア形成における主体性概念を定義したこと、および主体性への組織支援の影響を検証したことが研究実績である。
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