研究課題
当年度は、初年度に収集を開始したデータを基に、複数のディスカッションペーパーを作成し、また一般向けに研究成果を広く周知する書籍の編集を進めることができた。創発的な戦略構築の形成過程を探求するため、創発的戦略の理論的潮流を基にして1)多国籍企業の本社支社間の戦略立案、調整、実行のプロセスにおいて中間管理職の感情がどのように作用しているか、2)急成長を果たす新興企業がそのビジネスモデルを確立するまでに、その経営者は具体的に何をしているか、3)老舗企業の代替わりに伴う戦略転換において、先代と当主の対立がどう生じ、解消されていくかに関して研究を進め、1)に関してはディスカッションペーパーを完成させ、AoM2020に採択されることに成功した。また2)に関しては一般向け書籍を執筆、刊行予定となった。3)に関しても昨年来から継続中の研究であるが、学術雑誌への再投稿を完了した。また、創発的な行動をの背景となる環境要因を探求するため、制度理論の理論的潮流を基にして、4)業界標準の策定交渉において、鍵となる意思決定者間の属人的やりとりは利害対立解消をどう左右するか、5)日本のICTスタートアップエコシステムはどのようなプロセスを通じてその独特の行動様式を築き上げたのか、6)日中韓のICTスタートアップエコシステムはどう異なり、どう似通るのか、7)地方町おこしに若年層の部外者(ばか者・よそ者)はどう貢献できるのかを調査している。4)に関してはディスカッションペーパーを完成させ、EGOS2020に採択され、5)に関しては論文が一本採択され、6)に関しては研究の基本方針を固めた。当初計画より幅広い範囲から調査を進めているが、最終年度はより焦点を絞り、問いに対する答えを明確化して社会に発信したい。
3: やや遅れている
当初予期していなかったプロジェクト外の事情により、想定していたより進行が遅れている。充分なデータの取得は進んでいるが、一つ一つのプロジェクトが他の研究者との連携が必要なプロジェクトであり、想定よりやり取りに時間が勝っている。特に2月から3月の時点においても海外の研究者との協業に感染症の問題から遅れが生じてきており、早急に解決をする必要がある。一方で、昨年に作成したディスカッションペーパーはのきなみ国際学会に査読付きカンファレンスペーパーとして採択されており、着実な成果につながりつつある。また来年度にかけて本研究の成果を基にした一般向けの書籍も発売するが、これも遅れは生じたものの研究期間内に完成させることができた。
特に世界的に流行している感染症により、国際カンファレンスが全てオンライン開催となり、またインタビュー調査のアポイントメントもオンラインで可能な場所のみとなっている。調査対象先企業からは、研究に対する協力よりも実業を優先したいとの声も頂いており、一定期間、研究期間を延長することも視野に入れる必要があるのではないかと考えている。しかしながら、すでに完成しているディスカッションペーパーを磨きこんで投稿することは可能であるので、国際カンファレンスでの発表後にさらに磨き込み、年内には2編の論文を投稿し、最低限の成果にはつなげたいと考えている。
国際学会への出席に必要な経費を別経費から手当てすることが可能であったため、旅費が当初想定よりも大幅に削減された。一方で、スタッフを雇用してデータ入力、収集をする作業を進めることが可能となるため、次年度にはスタッフを採用して、研究活動を加速させたい。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Asian Business & Management
巻: 18 ページ: 211-247
https://doi.org/10.1057/s41291-019-00070-6
https://www.dijtokyo.org/ja/project/start-ups-in-asia-the-role-of-agglomerations-and-international-linkages/