2023年度は、これまでの研究成果を取りまとめ、学術論文として国際的な査読誌に掲載することを最優先として活動を行った。その過程において、共同研究者との会合、また関連する分野の研究者との協議のために欧州に出向き、活発な意見交換も行った。 結果として、老舗企業の研究では、組織論分野で最も影響力のあるジャーナルに国際共著論文が採択され、またリーガルテック企業の研究では、専門職の研究のカテゴリーの中核となるジャーナルにも国際共著論文が採択された。また、東アジアのスタートアップに関する研究でも、アジアの経営学研究で評価の高いジャーナルに採択された。これらの論文の執筆、改定作業を通じて、これまでの研究成果を取りまとめた。 具体的には、老舗企業の研究においては、Use of the Pastの研究潮流から、企業が過去から培ってきた制度や伝統をどのように現代における競争優位に変換させうるのか、その過程で、中間管理職がどのような役割を果たしているのかを議論した。同様に、リーガルテック領域の研究においては、第一段階の草稿から踏み込み、リーガルテック領域において新興企業を創業する経営者は、特に法曹界のバックグラウンドを持つ経営者とそうではない経営者を比較すると、創業後の戦略形成、意思決定の傾向が異なる可能性を提示した。また、その傾向が異なる要因として、創業前の経歴の差異の影響が大きいことを主張した。さらに、東アジアのスタートアップの研究においては、制度論の考え方を背景として、経営環境の不確実性と創業者の性質の関係性が各地域ごとに異なることを定量的に示した。 研究期間全体を通じて、制度と戦略の関係性を多面的に議論し、それを企業内、企業レベル、エコシステムのレベルの三つのレイヤーでそれぞれ探求した。その結果、数多くの国際会議での発表、また論文の刊行に成功した。
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