研究課題/領域番号 |
18K12850
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
久保田 達也 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (20634116)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 技術の延命 / 技術軌道 / 技術予測 / 問題解決プロセス / イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、技術が予想外に延命するという現象を対象に、技術性能の予想外の伸長が起きるメカニズムとその事前予測が困難な理由を明らかにすることを目的にしている。技術軌道の説明は、イノベーションマネジメントの研究領域において、多くの研究者が取り組んできたテーマであり、数多くの研究が蓄積されてきた。しかし、なぜ、どのようにして技術の延命が起きるのかを詳細に明らかにした研究はほとんどない。本研究では、研究開発者による問題解決のプロセスに焦点をあてながら、ミクロな視点からこの問題を解明し、延命のメカニズムを明らかにすることを目指している。 2020年度は、分析対象としている露光装置業界で性能の伸長に大きく寄与した技術に注目し、主要人物へZoomを使った聞き取り調査、および技術論文、露光装置のスペックデータの収集・分析を行った。聞き取り調査からは、延命に寄与した技術の創造プロセスや、それらの技術の登場を事前に想定することが困難な理由が明らかになった。また、技術論文とスペックデータの分析からは、技術発展の軌跡を詳細に明らかにすることができた。 以上の調査から、次の二点が明らかになった。一点目は、硬直的な問題解決の方法が技術の性能限界を予測させることにつながるということである。二点目は、ある企業から偶然生まれた技術が、当初は否定的な評価を受けながらも、後に延命や予想外の性能の伸長に寄与するということである。この二点はいずれも、本研究課題の解明にとって重要な知見である。否定的な反応が覆されるプロセスは現在調査中であるが、この問題を解明することが今後の研究課題である。 今後は、聞き取り調査や文献調査を継続して行っていくと同時に、中間成果、最終成果を国際学会や国際学会誌で発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大にともない、国際学会で学会発表を行う機会が得られなかったこと、また一部の主要人物に対して聞き取り調査を実施できなかったことなどから、当初予定した研究活動の一部を2020年度中に完了することができなかった。 他方で、既存研究や技術論文の整理、露光装置のスペックデータの収集に時間を割くことができ、これらの活動は予定よりも早く完了させることができた。加えて、聞き取り調査で収集する予定だった情報の一部は技術論文の分析から得ることができた。これらの状況を踏まえ、「やや遅れている」と評価した。 2021年度も前年度と同様、新型コロナウイルスの影響があると考えられるが、オンラインでの聞き取り調査やオンライン学会を適宜用いて、調査、成果発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度に引き続き、聞き取り調査・文献調査を中心とする追加の情報収集と成果の発表を行う予定である。現段階で構築した仮説の妥当性を検証するため、また不足している情報を得るために、露光装置業界で開発に関与した人物に対する聞き取り調査を実施する予定である。 さらに、国際学会での発表、国際学会誌への投稿に向けた作業も進めていく予定である。最終的に、イノベーション領域を専門とする海外ジャーナルへの投稿や国際学会での発表を行う予定である。各国の入国制限措置などで対面での学会は当面行われないことが予測されるが、オンラインでの学会や研究会などへの参加を通じて、成果の報告を積極的に行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、対面での聞き取り調査や海外学会発表を予定しており、それらの出張費を計上していた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、Zoomでの聞き取り調査に切り替えたり、出張を中止するなどしたため、支出は大幅に減少した。剰余分は、次年度の調査および研究発表に用いる予定である。
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