研究課題/領域番号 |
18K12853
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
渡邉 万里子 東京理科大学, 経営学部経営学科, 講師 (70736701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海外子会社 / トップマネジメントチーム / 異質性 / 企業家行動 / 制度環境 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績は次の2つの研究調査活動に示される。 まず、第一に企業へのアンケートによるサーベイ調査を用いた仮説検証の研究計画を修正し、2次データを用いたモデルの検討を実施した。同時に、海外子会社トップマネジメントチームと業績、海外子会社の人的資源配置に関連する2000年以降の先行研究を再調査し、重要な変数と概念モデルの抽出を行った。抽出の結果、先行研究では海外子会社トップマネジメントチームの異質性には組織レベルの人員構成が用いられており、特に国籍が多用されていること、また業績にはROAや労働生産性が用いられていることが明らかになった。また変数間の関係を調整する調整変数に関しては国の距離(文化的・制度的)が多用されていることが明らかになった。修正された研究計画では海外子会社トップマネジメントチームの異質性(組織・個人)に関して国籍以外のデモグラフィ要因やタスク要因(専門的な経験、海外勤務経験)も含めた仮説を構築し、変数の測定方法を検討した。そのうえで関連する2次データが入手できるデータベースの調査、サンプルの取り寄せや一部データの入手を行い、データの入手や整備を進めている。 第二に、関連する調査研究として、海外子会社マネジャー個人のタスク要因(専門的な経験、海外勤務経験)が組織やネットワーク(コミュニティ)の業績に及ぼす効果に関して国内の起業コミュニティを対象とした事例研究を実施した。この事例研究では、個人の経験の多様性(海外勤務、海外留学)が個人のグローバルマインドセットの醸成を促し、戦略的なネットワーキング行動や知識獲得に繋がる可能性が示された。このような特性や行動による周辺アクターの影響として海外の先進的な知識の移転やそれによる意識変革が引き起こされる可能性が示された。事例研究の成果は国内外の学会にて報告発表されており、有益なフィードバックを得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の進捗に遅れが見られる理由としては、以下の4つがある。 (1)コロナによる海外・国内移動の制限:コロナによる国内外の学会への参加が見送られたり、制限されたことにより、研究計画や研究費執行の予定が大幅に変更を余儀なくされた。 (2)協力企業の制限やデータ収集の困難:アンケート調査では協力企業の守秘義務などで協力を得ることが難しい状況であった。現在は研究計画の修正によって、2次的なデータベース活用によるデータ収集を中心としているが、それでも分析に活用できる有効なデータが揃わなかったり、年度によって欠如しているなど、網羅的に収集することが非常に難しい。 (3)コロナによる研究者個人の自粛・活動制限:コロナによる扶養家族の自粛(保育園の休園や時短営業)や濃厚感染疑いなどによる活動制限があり、1年を通じて思うように研究・調査活動が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、(1)網羅的な2次データの探索と入手、(2)2次データの整理の迅速化、(3)研究ノートの発表とフィードバックの獲得の3点である。(1)に関しては引き続き、データベースの管理・提供会社との交渉や協力を通じて、入手可能な2次データの購入や参照を行い、網羅的なデータとして統合を図る。(2)に関しては、データ間の統合や紐付けを行い、網羅的なデータとして整理していくために必要に応じてリサーチアシスタントを雇用することを検討する。(3)に関しては、現状の仮説構築までの研究進捗を学会などで報告発表し、次のステップである統計的な分析手法や考察に有益なフィードバックを獲得することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は次の2点である。(1)コロナによる移動・渡航の制限:コロナによる国内外の学会への参加が見送られたり、制限されたことにより研究費(旅費)執行の予定が大幅に変更を余儀なくされた。(2)網羅的なデータ収集の困難:研究計画の修正によってデータベース活用による2次データの購入を進めているが、年度や項目の欠損が少ない、分析に活用できる有効かつ網羅的なデータを探索することが非常に困難であり、データ購入計画が当初の予定通り進まなかった。 次年度の使用計画としては、旅費として想定・計上していた予算をリサーチアシスタントの雇用やデータベース提供企業へのデータ収集依頼の費用に当てることによって、より効率的に研究を進めることを計画している。
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