研究実績の概要 |
本研究は海外子会社のトップ・マネジメント・チーム(以下, Subsidiary Top Management Team: STMT)の役割に着目し、海外子会社の企業家活動に及ぼす影響を検討する。本研究は研究者のこれまでの問題意識や発見事項を発展させ、海外子会社の企業家活動の成果に貢献するSTMTの人材配置である「異質性」を説明する仮説モデルの検討と検証を目的とした。 本研究では、(1)研究代表者の事前調査や先行研究を整理・統合する文献調査、(2)仮説モデルの構築、(3)事例研究による仮説モデルの再検討、(4)定量分析による仮説モデルの検証のステップを段階的に進めた。(1)ではTMT研究、海外子会社の企業家活動と人材配置に関する研究を整理し、海外子会社の業績や能力に影響すると考えられるSTMTの異質性のタイプとして属性(国籍、性別、年齢)、能力(職務経験)、教育(学歴、専門)、文化(海外勤務経験)の次元を抽出した。STMTの異質性のレベルにはグループレベルと個人レベルがあり、能力に関しては①グループレベルにおける各人の主要職務経験の多様性と②個人の内部での職務経験の多様性が大別された。 次にSTMTの異質性の効果としては、海外子会社の企業家活動とそれに伴う能力の進化、業績への影響を検討した。最後にSTMTの異質性と海外子会社の企業家活動の関係を調整する要素として、現地国での事業経験と本国からの距離(文化的距離)を検討した。以上の事項を(2)仮説モデルに落とし込み、その妥当性について(3)複数事例研究で確認を行った。(4)定量分析による仮説モデルの検証については当初計画にあったサーベイ調査を再検討し、既存データを組み合わせたデータセットの構築を試みた。しかし、データの質と量が十分に確保できず、統計的に有意な結果が得られていないため、今後は継続的なデータセットの構築が課題である。
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