本研究の目的は、論文・書籍の引用データを用いた定量的アプローチを用いて、これまで実現しえなかった網羅的な学説史研究を展開する手法および、新しい経営学の研究手法を探求することにある。 令和3年度は、経営学分野においてこれまでに展開されてきた、定量的アプローチを用いた研究群の網羅的なレビュー研究を論文として発表した(高橋大樹(2021)「計量書誌学的アプローチを用いたマネジメント研究の現状」『武蔵野大学経営研究所紀要』第4号53-113頁)。Web of Scienceのマネジメント領域に分類される学術論文の中で、定量的アプローチを用いた研究群を示す最も特徴的なキーワードの一つである「bibliometrics」を含む研究は2021年8月時点でで295本あり、それらの論文の85%が2011年度以降、38%が2019年度以降に発表されている。本研究では、これらの295の論文に関して、定性的なアプローチを併用し、4つの研究パターンの分類をさらに試みている。そして、本論文ではこれらの4パターンの代表的な研究を紹介しながら、今後の発展可能性について議論を行っている。 令和4年度には、高橋大樹(2021)として公表した上記レビュー論文の中で将来の発展可能性が示唆された「分析対象文献に学術論文以外の文献も含みつつ、知の構造の探究以外の分析目的を有する研究」パターンに関する探索的な研究を行い、研究成果を公表した(高橋大樹(2022)「SDGsと経営学」武蔵野大学教養教育部会編著『SDGsの基礎~みずから学ぶ世界の課題』第Ⅲ部第6章)。本稿では、近年社会的注目が集まっているSDGsに関する日本企業の取り組みについて、新聞記事を定量的に分析し、探索的に議論しており、学説史研究以外でも経営学研究の分野で計量書誌学的アプローチを展開できる可能性を示したものとなっている。
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