研究課題/領域番号 |
18K12856
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
渡部 博志 武蔵野大学, 経済学部, 准教授 (40612461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フォロワーシップ |
研究実績の概要 |
本研究は、上司の下で組織目標に向けて取り組む際のフォロワーシップと、それと同時に自らがリーダーとして率いている部下に対するリーダーシップとの関係を、組織の能率性という観点から明らかにしようとするものである。いわゆる有能な中間管理職は、リーダーとして組織を率いながら上司の直面する課題の解決にフォロワーとして役割を担うという二重の機能を果たしているはずであることから、上司と部下からそれぞれに評価される特質や振る舞いを検証していくことで、同一人物に並存するフォロワーシップとリーダーシップの関連を分析していく。 平成30年度は、リーダーシップ論の中で展開されているリーダーシップとフォロワーシップを取り上げて、それぞれの議論が中間管理職をどのように捉えているのかを整理し、論文にまとめた。 同論文においては、リーダーとフォロワーの関係性の中の相互作用からリーダーシップもフォロワーシップも生じるのであれば、組織内の上司-部下の関係の中でフォロワーとして上司のリーダーシップを認識するという問題と、自らが発揮していると思っているリーダーシップを部下が認識するという問題とが複層的に生じるものとして整理することで、リーダーシップもフォロワーシップも組織の文脈に埋め込まれたものとして解釈が期待されることが指摘された。 また、リーダーシップとフォロワーシップを同時に担うことは、公式組織における中間管理職に限らず、安定した組織構造を持たないまま一丸となって協働するチームでも見られることから、階層組織ではないところでもリーダーシップを反照したフォロワーシップというものが課題となり得ることが指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の初年度として、フォロワーシップを発揮する中間管理職が、自らに託された組織の長としてリーダーシップを発揮するとき、同一人物に並存するフォロワーシップとリーダーシップにはどのような関連が見られるのだろうか、という問いに対し、フォロワーシップに注目したリーダーシップ研究を整理することで、今後の具体的な研究調査の視点を得られた。また、民間企業において中間管理職に位置する人物を対象に予備的なインタビューを行い、リーダーシップを発揮する場面とフォロワーシップを発揮する場面とを必ずしも意識的に関連付けられるものではないことが確認でき、今後の調査を行うことの実践的な意義を確認している。さらに、組織論研究者との討議からは今後の研究調査にあたって援用可能な先行研究等について示唆を得て、学術的な貢献についても検討を重ねることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究をもとに、今後はインタビュー調査とアンケート調査を行う。 インタビュー調査については、フォロワーシップとリーダーシップの二重の機能を持つ中間管理職に対するインタビューのみならず、その上司と部下にも聞き取り調査を行い、事業組織内の上司-本人-部下の3階層におよぶインタビューを実施することで、中間管理職の自己認識にとどまらない、統一人物に併存するフォロワーシップとリーダーシップの関係を確認する。 上記のインタビュー調査では対象とできる人数や組織の範囲に限界があると考えられることから、聞き取り内容をもとに蓋然性を検証するためのアンケート調査を実施していく予定である。 以上の研究手法を用いることで、中間管理職に代表されるフォロワーシップとリーダーシップの二重の機能を担う人物に着目して、その両機能が反照的に用いられているか否かを、組織能率への寄与という観点から明らかにしていく。発揮されるリーダーシップは、その個人が上長に対して行っているフォロワーシップを反照するものなのか、反照していないとすれば上長に対する態度と部下に対する態度が異なることになるが、それでも組織能率を高めることに寄与するのか、といった二重の機能と組織との関係を本研究は明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施した予備的なインタビュー調査において、遠方での実施がなく、またインタビュー協力者に謝金の受け取りを謝絶されたこと等により次年度使用額が生じたが、今後予定しているインタビューにおいては当初の計画通りこれらの経費支出が予定されていることから、翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究遂行のために使用していく。
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