研究課題/領域番号 |
18K12856
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
渡部 博志 武蔵野大学, 経営学部, 准教授 (40612461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フォロワーシップ |
研究実績の概要 |
本研究は、上司の下で組織目標に向けて取り組む際のフォロワーシップと、それと同時に自らがリーダーとして率いている部下に対するリーダーシップとの関係を、組織の能率性という観点から明らかにすることを意図して研究を始めた。 しかしながら、コロナ禍において上司と部下の接触機会そのものに、そもそもどのような変化が生じているのかを把握することが研究遂行上不可欠であると判断し、今年度(2021年度)は、最初の緊急事態宣言発出後の約1年後に実施したアンケート調査を基に、中間管理職が直面した組織内のコミュニケーションの変化とその影響について分析を行った。 日本国内に勤める30代から50代の中間管理職937名を対象にしたアンケート調査からは、最初の緊急事態宣言発出後1年間にリモートワークの頻度が増えたという回答は半数以上あり、特に一都三県においては非常に増えたとの回答が4割を超えた。このように多くの回答者にとってリモートワークという形で働き方の変化が生じた中で、業務上のコミュニケーションそのものが増加したという回答が3割にのぼった。もちろん、コロナ対応のために緊密なコミュニケーションが必要とされた結果である可能性も考えられるものの、業務そのものが大きく変わらないと仮定すれば、リモートワークの機会が増えたことでオンライン会議への参加が増えるという形でコミュニケーションの機会そのものが不必要に増え、生産性を減じている虞があることが示唆された。 今後はコロナ禍による環境の変化も踏まえ、中間管理職がリーダーとして組織を率いながら上司の直面する課題の解決にフォロワーとして役割を担うという二重の機能をいかに果たしているのかを、上司と部下からそれぞれに評価される特質や振る舞いを検証していくことで、同一人物に並存するフォロワーシップとリーダーシップの関連を分析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、中間管理職がリーダーとして組織を率いながら上司の直面する課題の解決にフォロワーとして役割を担うという二重の機能をいかに果たしているのかを、上司と部下からそれぞれに評価される特質や振る舞いを検証していく予定であった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、フォロワーシップとリーダーシップのいずれについても、それが発揮される場面を感知する機会が、量と質の両面において以前と比べ大幅に変化している。そのため、研究当初に計画し実施していた研究調査との間に非連続的な状況が生じている。フォロワーシップとリーダーシップの両機能が反照的に用いられているか否かを、組織能率への寄与という観点から明らかにしていくために、当初とは異なるアプローチを模索しており、本研究課題の進捗はやや遅れていると言わざるを得ない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究をもとに、アンケート調査を中心に研究を推進する。 職場での働き方がこの2年間で変化した組織もある中で、それらを包含する形で、フォロワーシップの体得とリーダーシップ経験という視点に立った質問票調査を行うことで、フォロワーシップとリーダーシップの両機能が反照的に用いられているか否かを、組織能率への寄与という観点から明らかにしていく。 当初の研究計画では想定されていなかった、コロナ禍による働き方の変化が及ぼす影響は、結果としてフォロワーシップとリーダーシップの二重の機能を持つ中間管理職の役割や、組織能率に寄与するフォロワーシップ行動ならびにリーダーシップ行動に変化をもたらしている可能性もあることから、職場での働き方の違いも考慮に入れた分析を研究の中で行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による変化を受け、補助事業の目的をより精緻に達成するためには当初計画していた研究調査から異なるアプローチへ変更する必要が生じたため、その検討段階では助成金の使用を行わなかったことで、次年度使用額が生じた。補助事業の1年延長とあわせ、コロナ禍による職場での働き方の違いも考慮に入れたアンケート調査を実施するにあたって助成金を活用させていただく予定である。
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