スター・サイエンティストとは、卓越した研究業績を残す少数のサイエンティストのことを指す。彼らは、通常の研究者に比べて、多くの論文を出版し、多くの引用を集め、更に成長率の高いベンチャー企業を設立する傾向にあることが米国の1980年代のバイオテクノロジー分野において観察されている(Zucker & Darby)。本研究では、先行研究のフォーカスを広げ、2000年から現在までの間に、サイエンティストが関与する研究分野全般におけるスター・サイエンティストの分析を行った。主な成果は二つに分類される。 第一の成果は、カリフォルニア大学発ベンチャー企業データセット(2000年以降の特許ベースの全ベンチャー企業541社が含まれている)を活用し定量分析を行ったことである。発明者の関与、SBIRの有効性に関する論文を2本まとめ、それぞれにおいてスター・サイエンティストの関与を検証した。 第二の成果は、サンディエゴのエコシステムにおけるスター・サイエンティストの関与を分析したことである。カリフォルニア大学サンディエゴ校と東京大学の比較に関する定量分析については学会発表を行った。その他、サンディエゴのエコシステムにおけるスター・サイエンティストへのインタビューなどを行い、現在成果を取りまとめている。 本研究を通じて、カリフォルニア大学に関連するスター・サイエンティストの概要を明らかにした。調査対象はカリフォルニア大学に限定されるものの、本研究は、1) 2000年以降を対象としている、2) 全研究領域を対象としている、という二つの側面において、スター・サイエンティスト研究の新しい領域を切り拓いた。
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