研究課題/領域番号 |
18K12861
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研究機関 | 多摩大学 |
研究代表者 |
小林 英夫 多摩大学, 経営情報学部, 教授 (40710083)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創業者・滑業家関係 |
研究実績の概要 |
2020年度はCOVID-19の問題により、予定していたシリコンバレーのフォローアップ調査を断念した。また国内企業の参与観察や訪問インタビュー調査も殆ど断念せずるを得ず、わずかにオンライン会議を通じて数名の起業家と起業後の人材調達に関する意見交換を行うにとどまった。 フィールドワークを満足に行うことが困難であったために、代替活動として、アクセス可能な2次資料(急成長企業の組織運営に関して記述した文献)のレビューや、滑業家的行動をしていると思われる人物や滑業家概念を評価するSNS等の情報発信の洗い出しを通じて、これまでの研究内容の妥当性の検証を中心に行った。 後者に関しては、本研究のベースとなっている拙著『何がベンチャーを急成長させるのか』に対する書評やコメントをレビューしたところ、拙著に共感を寄せる発信を数多く発見することができた。具体的には、「自分の今までの仕事、組織内での動きといったものの意味を認識することができた」といった滑業家の実感的コメントや、ベンチャー経営者や研究者の立場で朧げに理解していた滑業家の重要性が明確になり、側近としてそのような人物を賞賛したり、そのような人物の確保を意識して行動するようになった等である。このことから、滑業家が現実社会の中で受け入れられる概念であるとの意を強くした。 しかしながら、アカデミズムの観点からより精緻な理論化を行う必要があると認識しており、今後取り組む課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究手法として、主にインタビュー調査や参与観察を用いるものであるが、COVID-19により面談による長時間のインタビューの実施が困難であった。また、COVID-19の影響でリモートワークが多用されるようになり、創業者と滑業家の関係や滑業家と目される人物の組織内での行動を研究者として企業内に常駐して観察することが殆ど行えず、またリモートワーク環境における組織内のメンバーの相互作用の観察も困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の収束が見通しきれない状況下では、当初計画していた国内企業の参与観察型の調査や米国企業の現地調査等のフィールドワークの実施は残念ながら見込めない。このため、SNS等を通じた発信情報の精査や文献研究に基づく仮説設定を深めた上で、可能なレベルでの検証活動を行うものとせざるを得ないと考えている。 一方で、COVID-19によるリモートワークの進展と働き方の変化は、企業組織のあり方に変化を生むであろうことが推察される。滑業家が企業成長とともに生じる機能的欠落を埋めるべき自律的に行動する存在であり、組織内を柔軟に漂いながら欠落機能を認識しているとすれば、場の雰囲気や規定・想定された内容以外の情報を把握しにくいリモートワークの進展は、滑業家的な問題・課題発見と自律的な対応に困難が生じる可能性が高まると考える。研究にこのような視点を追加して、出来うる調査・考察を追求したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により、想定していたインタビュー調査や参与観察調査を実施することができなかったため。次年度については、COVID-19の収束状況により使用計画は変わってくるが、少なくとも海外企業の現地調査は困難であると認識している。調査が行えなかった場合には、敢えて使用することはない。
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