研究課題/領域番号 |
18K12861
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研究機関 | 多摩大学 |
研究代表者 |
小林 英夫 多摩大学, 経営情報学部, 教授 (40710083)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 滑業家 / ベンチャー企業 / ギャップフィラー / 絆創膏現象 |
研究実績の概要 |
本研究のベースとなった書籍『何がベンチャーを急成長させるのか(2017)』で取り上げた「滑業家の存在を指摘したものの、成否不明の創業初期段階であるベンチャー企業」の事例のフォロー調査を行った。結果として、この企業は東証マザーズを経て東証一部を果たしており、「滑業家が存在すればベンチャーが急成長する」および「急成長するベンチャーには滑業家が存在する」という仮説が棄却されることはなかった。但し、滑業家の存在とベンチャーの急成長の因果関係を必要十分条件として主張するだけの事例が収集できているわけではない点に留意は必要である。 滑業家の概念を世に問うた結果を分析した結果、滑業家の重要性を理解するベンチャー関係者は多く、自らの行動を振り返って自身が滑業家であると感じる者もいた。概念を妥当なものとして受け止める者や、自らの役割と重ね合わせて納得するベンチャー関係者が存在することから、当該概念の妥当性はそれなりに認められるものであり、理論的に広く受け入れられる可能性は十分にあると評価した。 COVID-19により海外に赴いての調査は出来なかったが、文献研究により海外でも滑業家に類似する役割と事象があることを見出した。そこでは、「急成長企業において、成長が早すぎて経営陣が揃わない場合に、空きポジションに絆創膏を貼るように信頼する社員にその役割を務めてもらう」時に、その人物を組織の穴を埋める「ギャップフィラー」、とりあえず空きポジションをギャップフィラーで埋めることを「絆創膏現象」と呼んでいる。ギャップフィラーの特性や行為に関する指摘は、筆者の滑業家に関するこれまでの研究成果と非常に整合的であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19により、国際比較のための海外事例を現地に赴き調査することができなかった。また国内事例についても、リモートワークが多用されるようになったために、組織内の成員の相互作用といった非公式組織の構造を企業内に常駐してエスノグラフィー的観察を行うことも難しくなってきている。このため、当初想定していた研究手法を適用することが困難な状況となっているため。
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今後の研究の推進方策 |
滑業家の概念の精緻化と国際比較を行う本研究であるが、海外でも類似した考え方を見い出したことで、その方向性は誤っていないと考えている。 海外文献のギャップフィラーや絆創膏現象に関する指摘は学術研究におけるものではなく、独自性のある本研究の集大成として滑業家の概念の学術的確立に取り組む。。そのために、これまでの筆者の研究内容を英文論文としてまとめて海外ジャーナルへ投稿し、提示概念の妥当性を国際的に問うことを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による実地調査未実施、および学会全国大会のオンライン化により交通費削減のために未使用であった。 次年度は作成論文の英語化サポートおよび海外ジャーナル投稿のために使用することを計画している。
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