研究実績の概要 |
助成事業補助期間の満了を見据えて、本研究課題の最終的なとりまとめ作業に着手し、報告論文の執筆を開始した。 過去2回にわたり所属大学の紀要に研究ノートとして掲載した内容をベースとして、滑業家の概念の理論化と国際比較について、当概念が一般的に受け入れられるものであるのか、およびそれが雇用慣行や起業行動への評価という日本に特異性のある環境に特有のものであるのかの検証を進めた。このために、追加的な研究を国内外の事例に対して実施した。 国際比較においては、Gil(2018, High Growth Handbook: Scaling Startups from 10 to 10,000 People, Stripe Press)と小林(2017, 何がベンチャーを急成長させるのか, 中央経済社)の比較を通じて、概念の妥当性の検証や拡張を行った。結果として、職務定義書により組織体制を整備する米国であっても、滑業家の動きをする人物がベンチャーに存在しており、日本の特別な現象ではないことが明らかとなった。但しそれは経営幹部層の話であり、メンバーシップ雇用によるゼネラリスト育成が一般的な日本より上位層に偏っている。また、米国ではそのような役割の人物は、後釜の採用が最重要職務であり、自らは強い色を出さずに、問題を顕在化させず当面の穴埋めに徹することが期待されている。一方、日本では後釜の採用がメインではなく、業務的穴埋めがメインであり、その業務をうまく回してくれること自体が主な期待である。これも、日米の雇用慣行の違いに大きく影響を受けていると考えられる。 報告論文は関連学会への投稿を予定していたが、機関誌における本研究に合致するテーマの特集に対する論文執筆の招待を研究機関より受けたため、これに応じた掲載として公表することとして執筆作業を行っている。
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