研究課題/領域番号 |
18K12867
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
足代 訓史 拓殖大学, 商学部, 准教授 (40583258)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 企業家の失敗 / アントレプレナーシップ / 認識枠組み / ビジネスモデル / ドメイン / プラットフォーム / エンゲージメント行動 / 消費者生成メディア(CGM) |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)企業家の認識枠組みの変化と、(2)ビジネスモデルに関する企業家の学習、の2つの論点から、企業家による事業の失敗からのリカバリープロセスの論理を明らかにすることを目的としている。その際、理論研究と事例調査・事例分析を同時並行的に遂行することで、研究課題の検討を進めている。 令和4年度は、理論研究に関しては、以下の通り進めた。本研究では、事業の失敗という論点を検討するため、一度は市場地位を築くことに成功したビジネスモデルが成熟したり、衰退したりする現象を、とりわけプラットフォームビジネスを展開する企業家の事例から調査している。そのため、本年度においては昨年度から引き続き、プラットフォームビジネスの成熟と衰退に関する既存研究を整理し、レビュー論文を執筆した。また、プラットフォームビジネスの中でも特にCGM(消費者生成メディア)型プラットフォームの成熟・衰退に着目し、CGM型プラットフォームと従来のプラットフォームの性質的な相違や、CGM型プラットフォームに見られる特徴的なプレイヤー行動であるエンゲージメント行動についての理論的整理を進めた。 事例調査に関しては、プラットフォームビジネスに取り組む企業家の2名へのインタビュー調査とフォロー調査を進めた。また、当該対象事例に関するユーザー行動に関するマーケティング調査を市場調査会社に依頼し、入手したデータの分析も行った。上記の取り組みを通じ、研究対象事例に関するケースライティングと事例分析を進め、事例研究論文の執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度中の目標は、理論研究に関しては、(1)プラットフォームが成熟・衰退する論理を検討することと、(2)研究対象であるプラットフォームが展開するCGM関連の理論研究を進めることであった。また、事例調査に関しては、(3)継続的なインタビュー調査を行うとともに、入手可能データによる詳細なケースライティングを進めることにあった。そのうえで、(4)これまでの研究成果を踏まえた統合的分析と最終的な理論的整理、今後の研究の展望に関する検討を行う予定であった。 (1)に関しては、上述の通り成熟・衰退段階のプラットフォームビジネスに関するレビュー論文を執筆し、公刊できた。(2)に関しては論文の収集を進めており、検討の最中にある。(3)に関しては、概ね計画通り進行したが、企業家に対するインタビュー調査が、2件にとどまった。(4)に関しては、学会誌への学術論文掲載(2本)や学術論文投稿(1本)などを行うことができたものの、統合的分析や研究の展望に関しては検討の過程にある。とりわけ、リカバリープロセス(回復過程)に関する研究は途上にある。 以上から、本年度の自己評価を「(3)やや遅れている。」としたい。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により研究期間を再延長させて頂いていたため、令和5年度は本研究課題の最終年度となる。理論研究に関しては、上述の通り、CGM関連の理論研究を進めるとともに、(プラットフォーム型の)ビジネスモデルに関する、企業家の認識枠組み、とりわけ事業の失敗とそこからの回復を捉えうる概念に関する理論的研究を進めたい。また、事例調査に関しては、継続的なインタビュー調査を行うとともに、入手可能データを収集・整理し、事例記述の頑健性を高めたい。 そのうえで、最終的な統合的分析と今後の研究の展望に関する検討を行いたい。以上の内容に関しては、令和4度に引き続き、適宜学術論文投稿を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、令和4年度に予定していた国内外学会の現地参加が無くなった。また、インタビュー調査にかかる謝礼を計上していたが、前年度までと同様インタビュー対象の企業家の方のご厚意により、謝礼を用いずに調査を遂行できた。主に左記により未使用額(次年度使用額)が発生した。 令和5年度に請求する研究費の主な使用目的は、文献収集、国内学会における情報収集ならびに学会報告・聴講、インタビュー調査である。なお、諸般の事情により学会参加が叶わない場合、当該費用は、データベース分析や研究成果発表に関する用途へと変更する可能性がある。
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