研究課題/領域番号 |
18K12869
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
太田 壮哉 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (50756020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フェアトレード / フェアトレード情報 / 選択行動 |
研究実績の概要 |
本研究では,フェアトレードを認識し購入するために,フェアトレード関連団体あるいは企業はどのような情報を提供すべきなのかについて調査・分析を行っていくことを目的とするものである。具体的には,ネガティブ型の情報(児童労働の画像を提示し,フェアトレード商品を購入すればそれを改善できることを伝える)とポジティブ型の情報(学校に楽しそうに通っている児童の画像を提示し,フェアトレード商品を購入すればその画像のような生活をさせられるという情報を伝える)を商品選択前に提示し,どちらの方が好ましい影響を選択行動に与えられるのかを検証する。 そこでまず2018年度においては,上記2つの情報を提示しない状況でフェアトレード商品パッケージ内にある複数の属性[フェアトレード情報(オーガニック,児童労働改善),企業ブランド,価格]が当該商品に対する商品者の選択行動にどのような影響を与えるのかを離散選択実験(the Descrete Choice Experiment:DCE)手法を用いて調査・分析を行った。実験対象となる商品はチョコレートを採用している。その結果,フェアトレード情報(オーガニック,児童労働改善)と企業ブランドは選択行動にポジティブな影響を与えていることが明らかとなった。しかし,フェアトレード情報とオーガニックの交互作用に関しては選択行動にネガティブな影響を与え,フェアトレード情報とブランドの交互作用に関しては選択行動に対しての影響を確認することができなかった。つまり,フェアトレード情報に企業ブランドが加わることによってフェアトレード情報そのものが持つ効果が確認できなくなってしまったのである。2019年度では,本調査にポジティブ型の情報とネガティブ型の情報の提示を商品選択前に加えることによって同様の分析を行い,選択行動に与える影響の違いを見ていく。そのため本研究を行うことは意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の計画段階では,①フェアトレードの説明→②対象チョコレートの提示→③購買態度(選択行動)の評価→④ポジティブ型情報あるいはネガティブ型の情報の提示→対象チョコレートの写真を提示→⑤購買態度(選択行動)の評価の順序でアンケート調査を行い,③と④の購買態度(選択行動)の変化の影響の違いを比較するというものであった。 しかし,消費者は商品選択をする際に製品パッケージ内の複数の属性によってもその選択行動が変化する可能性がある。そして,事前に与えられた外部情報によってその複数の属性の選択行動に対する影響も変化する可能性がある。そのため,製品パッケージ内の複数属性の選択行動に対する影響も検証できるように当初の研究計画を変更した(離散選択実験とコンジョイント分析を前提とした調査手法に変更)。その変更に際して本年度は時間を費やしてしまったため,やや研究計画に遅れが出ているが本年度中には完了できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年4月の段階で2018年度に行ったアンケート調査にポジティブ型の情報とネガティブ型の情報を加えたものを作成する。アンケートの作成は株式会社マクロミルが運営するクラウド型アンケート作成ツール「Questant(クエスタント)」を使用する。2019年5月の段階でクエスタントのサンプルを集めるサービス(GMOサービス)を利用し,アンケートを実施する。2019年6月~8月にアンケートの分析を行い,2019年9月~12月の間に論文の作成を行う。そして,2020年1月に論文投稿の手続きを行い,残りの期間で本研究の課題を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は,主に実験手法や計画変更に伴う文献の購入費用及びタイのチェンライに本拠地を置き,フェアトレードコーヒーを販売しているドイチャンコーヒーにフェアトレード販売における現状と課題についてヒヤリングを行うための旅費へ支出を行った(後者に関しては,本研究の問題意識をより強固なものとするために計画にはなかったが行うことにした)。これら費用は本研究のアンケート調査の準備のために費やした費用であり,2019年度に本準備を踏まえてアンケート調査を行うために次年度の使用額が生じた。 次年度は,上記アンケート調査を行うための費用(アンケートのサンプルの収集)として使用する予定である。
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