本研究の目的は管理職層のワーク・ライフ・バランスの実現を規定する要因を検討することである。 最終年度となる令和4年度の計画は、再度質的分析の方法論について知識を深め、そこで得た知見を用いて改めてインタビュー調査の詳細な分析を行うことであった。 この計画にもとづき、昨年度投稿した論文について再分析を行い、大幅な修正を行った。また、管理職に対するインタビュー調査データから、管理職のワーク・ライフ・バランスに関わる要因の抽出を行った。その研究成果について2022年10月の国内学会にて報告を行い、実務家および人的資源管理およびその関連分野の研究者と議論を交わすことができた。また、学会報告の内容にもとづき論文執筆を行った。それぞれの研究の成果は論文として2023年に3月に公刊されている。さらに、抽出した管理職のワーク・ライフ・バランスに関わる要因を用いた質問票を設計し、リサーチ会社を通じた質問票調査を実施し、分析を行った。 研究期間全体を通じ、管理職層のワーク・ライフ・バランスの実現要因に関しては次のような発見事項が挙げられる。管理職のワーク・ライフ・バランスと非管理職層のワーク・ライフ・バランスに対する質問紙調査の比較から、仕事の要求度や勤務計画の策定における自律性がワーク・ライフ・バランスの実現に共通して影響が見られた。また、管理職層に対するインタビュー調査を通じて、これまでの先行研究で明らかにされてきたワーク・ライフ・バランスの実現に影響を与える要因に加えて、部下の成熟度が管理職のワーク・ライフ・バランスの実現に与える要因として抽出された。さらに、先行研究にて、非管理職層においては特に職場の管理職からの支援がワーク・ライフ・バランスの実現にあたり重要な要因であることが指摘されているが、管理職層ではそれが見られないことも質的分析を通じて明らかになった。
|