2018 年度実施状況報告書

イノベーション創発を促進するプラットフォームエコシステムの機能・要件の研究

研究課題

研究課題/領域番号	18K12874
研究機関	国立研究開発法人産業技術総合研究所
研究代表者	井上祐樹国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 産総研特別研究員 (80812388)
研究期間 (年度)	2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード	プラットフォームエコシステム / 二面性市場 / ビデオゲーム市場 / 宿泊仲介市場 / エージェントシミュレーション / イノベーションマネジメント
研究実績の概要	本研究は、プラットフォームエコシステムで革新的な補完財を生み出すためのプラットフォームのルール・機能の要件を明らかにすることを目的とした。定量データ分析とエージェントシミュレーションを組み合わせて、エコシステム内でのイノベーション発生メカニズムを計算機上で再現することを目指す。対象市場は、製品を扱う例としてのビデオゲーム市場と、サービスを扱う例としての宿泊仲介市場を主に扱う。当該年度の研究計画は、シミュレーション基盤を構築することであった。成果として、企業がプラットフォームエコシステム内でイノベーションを創出する状況を再現した、二面性市場のシミュレーションシステム構築を達成した。本システムはR言語を用いて独自に開発した。また、実際に本システムを用いて、宿泊施設がプラットフォームエコシステム内で革新的なサービスを生み出す状況をシミュレーション上で再現し、プラットフォーム提供者がプラットフォームに搭載すべき機能について検証した。本成果は論文としてまとめられ、国際誌International Journal of Technology Managementにて査読を受けている。また本年度に実施予定であった、イノベーション発生におけるデータ分析の一部を進捗させた。ビデオゲーム市場の分析においては、イノベーションの一つの指標としてのソフトウェアブランド確立についての統計的分析を行った。また、補完者の製品提供行動とエコシステムの持続可能性の関係の分析を行った。宿泊仲介市場については、現状のサービスプラットフォーム実現形態の洗い出しと、イノベーションを生み出すエコシステム実現のための、望まれるサービスプラットフォームについてのコンセプトを整理・考察した。これらの成果はそれぞれ、日本MOT学会年次研究発表会、Sustainability誌、サービス学会国内大会において発表・掲載された。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 1: 当初の計画以上に進展している理由当該年度に実施予定であったシミュレーション基盤の構築について、当初の計画通りに達成した。それに加えて、本年度で実施予定であったデータ分析にも踏み込んで、研究を進捗させることができている。したがって、当初の計画以上に進展していると考える。
今後の研究の推進方策	現時点で当初の予定通りに研究が進捗しているため、今後も基本的には提出した研究計画にしたがって進めることを考えている。本年度においては、プラットフォームエコシステムのデータ分析を通して、補完者がイノベーションを発生させることができる条件と、エコシステムの参加者の特性ベクトル・嗜好ベクトルを明らかにすることを目指す。さらに、当初計画には含めていなかったが、エコシステムの持続可能性向上の観点を含めることで、イノベーション創出分析のみの範囲を超えた研究成果を生み出すことを目指す。またこれらに並行して、次年度に実施予定であったデータ分析とエージェントシミュレーションの融合を行う方法についても探索を進めていく。
次年度使用額が生じた理由	当初は解析用コンピューターを購入する予定として物品費を計上していた。しかし、他の研究予算により購入することとなったため、次年度使用額が生じることとなった。本年度は大規模なアンケート調査を実施する予定のため、アンケートのサンプル数増加や、追加アンケートの実施に活用する予定である。