本研究は、オムニチャネル環境を構成するためのチャネル間統合を中心に、小売企業の活動が消費者行動と企業成果に与える影響について明らかにすることを目的とした。消費者行動に関する研究においては、既存研究で議論されていた理論的枠組みでは回答できない問いに答えるために、探索的な調査による消費者行動を把握することから始めた。探索的な調査から得た知見をもとに新たな仮説を構築しそれを定量的なデータ分析をすることで、研究成果を得た。一方で企業成果への影響については、消費者行動分析の知見をもとにした企業売上の変化を捉えた研究や、チャネル間統合が企業の費用効率性に与える影響を分析した研究など、日本の小売企業におけるオムニチャネル化と企業成果について包括的な知見を得た。具体的には、小売企業によるチャネル間統合は企業の費用効率性を向上させるものの、オンラインチャネル経験年数の長い企業においてはこの効果が弱まることがわかった。この結果は、オムニチャネルにおいては技術の陳腐化などに代表される後発者優位が機能しており、技術的アップデートが重要になる可能性を示唆している。 これらの研究成果は、academy of marketing science や American Marketing Association、日本応用経済学会といった国内外の学会報告やセミナー報告に加え、Journal of Interactive MarketingやJournal of Retailing and Consumer Services といった国際的な学術誌を通じて国際的に発信された。このような結果からも、本プロジェクトによる研究成果は国内外を通じて学術的な貢献を持つものであると考えられる。
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