研究課題/領域番号 |
18K12878
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
本條 晴一郎 静岡大学, 工学部, 准教授 (50506748)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユーザーイノベーション / 消費者イノベーション / クラウドソーシング / 製品開発 / マーケティング / 消費者行動 / 商学 |
研究実績の概要 |
近年、利用者自身が製品の創造・改良を行うユーザーイノベーションに注目が集まっている。ところが、消費者がユーザーイノベーションを実現するにあたり、消費に対する態度と製品の創造・改良の実現がどのような関係にあるかは十分に解明されているとはいえない。本研究の目的は、消費者として重視する感情的な側面と実用的な側面がユーザーイノベーションにどのような影響を与えるかについて明らかにすることである。 研究3年目である令和2年度は、(1)社会的側面に注目した理論研究と、(2)自然言語処理を用いた消費者のアイデアの分析を行った。 (1)の理論研究においては、当初行う予定だった大規模定量調査が新型コロナウイルス感染症を想定したものでなかったため、コロナ禍以降の社会状況に適合する形で理論の拡充を図った。具体的には、快楽的価値と功利的価値に加え、社会的価値を消費者イノベーションに結び付けるための枠組み構築を、消費者行動論の既存研究を参照することによって行った。その過程で、ソーシャルイノベーションとユーザーイノベーションの関わりについてのセミナーを行い、知見の社会・国民への発信に努めた。 (2)については、コロナ禍によって大規模定量調査が実施できなかったため、コロナ禍で加速したデジタルへのシフトを踏まえた研究を行った。ユーザーイノベーションを前提とした製品開発手法であるクラウドソーシングに注目し、消費者から投稿された多数の意見から独創性の高いものを少ない労力で見出すため手法を、自然言語処理を利用することで構築した。概念空間内で稀少な意見の独創性が高いという創造性研究の既存研究を踏まえ、概念空間全体を消費者による全投稿で近似することによって各投稿の独創性を算出し、それが実際に有望性の高い製品に結びつくことを示した。この結果は、マーケティングジャーナル誌において査読付きの学術論文として出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画においては、日本国内および米国での大規模定量調査を行う予定であった。大規模定量調査を円滑に実施し、なおかつ国際比較の条件を整えるため、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて調査の実施を見送った。同時に、コロナ禍が終息しない場合でも調査可能な形の代替計画を構築し、社会的側面を踏まえた理論構築を追加で行った。また、コロナ禍に影響を受けない一般的な知見を見出すために、自然言語処理を利用したクラウドソーシングの研究を追加で行った。以上のことから、当初予定していた研究活動は遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である令和3年度は、(1)定量調査を行った上で、(2)研究成果の報告に努める。 (1)の定量調査においては、消費者を対象とした調査を行い、概念化した快楽的価値、功利的価値、社会的価値がユーザーイノベーションの実現にどのように関わっているかを実証的に明らかにする。初年度に実施した理論研究、当初計画に追加して2年目に行った二次データの分析結果、3年目に行った社会的価値を含めた追加の理論研究を踏まえて作成・ブラッシュアップした質問票を用いた調査を行う。 (2)の研究成果の報告においては、国内外の学会報告・学術論文公刊・査読付き論文雑誌での発表を行う。また、広く社会・国民に発信するため、書籍としての公刊や、ビジネスセミナーでの講演、公開研究会の開催、SNSを含むウェブサイトでの公開など、多種多様な形での発表を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画においては、日本国内および米国での大規模定量調査を行う予定であった。大規模定量調査を円滑に実施し、なおかつ国際比較の条件を整えるため、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて調査の実施を見送った。 最終年度に、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた上で定量調査を実施する予定であるため、そのための経費として使用する。
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備考 |
公開講座(1)「ユーザーイノベーションとデザイン文化」Xデザイン学校公開講座『Xデザイン学校公開講座「意味のイノベーションからソーシャルイノベーションへの贈り物―意味に目を向けるデザイン文化」』, オンライン開催, 2020年11月3日 公開講座(2)「ユーザーイノベーションと共創による製品開発」, 大阪大学Innovators’ Talk, オンライン開催, 2021年3月18日
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