デジタル・マーケティングは、国内外において過去10年以上に渡り多くの研究が行われてきた。本研究は、本領域で未だに解決されていない以下の2つのオープン・クエスチョンを取り扱う。課題(1)オフライン(テレビCMなど)とオンライン(バナー広告など)のメディア接触と購買行動の関係を包括的に扱うため、実証研究として、オンラインとオフラインの双方に渡る大規模なシングルソース・データを利用する。課題(2)メディア接触と購買行動の因果関係の推定におけるバイアスとなる内生性へ対応するため、最新のマーケティング・サイエンスのデータ解析手法である構造推定モデルによる分析を行い、頑健で精度の高い推定を行う。 本年度は、前年度までの理論モデルと定量調査分析、および上記で述べた本研究の2つめの課題であるメディア接触と購買行動の因果関係の推定におけるバイアスとなる内生性に対応した構造推定モデル(トピックモデル(LDA)分析や差分の差(difference in difference)分析など)による分析を発展させつつ、近年のオンライン・マーケティング実務において重要性を増している画像効果を機械学習による画像データ分析により検証した。結果として、(1)構造推定モデルを大規模データに適用することによりバイアスを統制した分析が可能であること、(2)機械学習による画像データ分析がマーケティングにおけるパッケージ画像評価に有効であること、(3) 製品パッケージ画像が与えるイメージ効果によって消費者の購買行動に影響があることを明らかにした。これらの研究成果を国際シンポジウム「Applications of Data Science in Social Science Symposium」にて発表を行った。
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