研究課題/領域番号 |
18K12895
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
古賀 裕也 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (40780383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 格付 / 利益マネジメント / 複数格付 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は日本の格付市場の特徴である複数格付が利益調整行動にどのような影響を与えるのか、またどのような経済的帰結が生じるかを実証的に検証することである。 2019度は、本研究課題で執筆した論文2編を学会で発表した。1つ目の論文は、42nd annual congress of the European Accounting Association(EAA)で発表を行った。本研究では、A-とBBB+の格付が付与された企業は利益マネジメントを実施していること、複数格付がA-とBBB+の格付が付与された企業の利益マネジメントを抑制させることが明らかとされている。2つ目の論文は、19th Asian academic accounting association (FourA) annual congress 2019で発表を行った。本研究は、IFRS適用企業の格付関連性がIFRS適用後に増加していること、また複数格付を取得している場合、その効果がより顕著に表れることが明らかにされている。 学会報告後に、これら論文2編についてのコメントを受け、修正を行った。1つ目の論文は、モデルの修正を行って再検証を行った結果、投資適格と不適格のボーダーラインであるBBB-とBB+で顕著な実体的利益マネジメントが観察された。この結果は、EAAで発表した論文の結果と異なるものの、海外の先行研究とより整合的な結果となった。また、格付機関は複数格付が付与されている企業の実体的利益マネジメントについては格付水準において割り引いて評価していることが確認された。これは複数格付が格付の質について有用であることを示している。2つ目の論文はいくつかの頑健性分析を追加的に実施した。頑健性分析を行っても実証結果に変化はなく、本論文の検証結果の妥当性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、研究実施計画に沿って研究を進展させることができているといえる。2019年度の研究実施計画の主な内容は2018年度に執筆した論文の海外学会報告と推敲である。2019年度の実績として海外学会発表を2回実施し、おおむね研究実施計画が達成されたと考えられる。また、学会報告後のコメントや意見交換をうけて、論文の推敲を実施した。2019年度末において、2本の論文の推敲がおおむね完了しており、これもまた研究実施計画とおおむね整合的な実績となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度末においてCOVID19が世界的に流行し、勤務している大学では不用不急の国内外の出張が制限されている。また、海外学会や国内学会の開催の延期、キャンパス閉鎖、オンライン講義への対応など学術活動に支障も生じている。こうした状況の中、本研究計画も影響を受ける可能性がある。2020年度の実施計画の主な内容は2018年度及び2019年度で執筆してきた論文の海外ジャーナルへの投稿であった。2020年度は計画通り論文の推敲を進め2020年度中の論文の海外ジャーナルへの投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は2019年5月にキプロスで開催された42nd annual congress of the European Accounting Association(EAA)と2019年11月にソウルで開催された19th Asian academic accounting association (FourA) annual congress 2019で学会報告を行った。データベース代で多くの予算が必要となったため、EAAの渡航費については研究代表者の個人研究費で賄った。また、FourAに関しては、隣国のソウルで実施されたため、予定よりも費用が少なく済んだ。その結果、次年度使用額が生じた。次年度使用額は来年度の海外ジャーナル投稿費用や英文校閲費用などに利用する予定である。
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