研究課題/領域番号 |
18K12897
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 太一 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 講師 (10779771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マネジメント・コントロール / 行動契約理論 / 同調圧力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,純粋に利己的かつ経済合理的ではなく,種々の心理的要素のワーク・モチベーションを左右されるようなマネジャーにとって,最適なマネジメント・コントロールの設計はいかなるものであるのかを,数理的に解明することであった. 本年度は,マネジメント・コントロールの効率性および有効性に影響を与える心理的側面を特定し,数理モデル分析を行った.マネジメント・コントロールの効率性および有効性に影響を与える心理的側面としては,従業員間の同調圧力を取り上げることにした.人々が集団で働く上で,「他の人に合わせて自分の行動を変える」という現象は心理学研究(Sherif 1936など)のみならず,経済学研究(Kandel and Lazear 1992など)でも取り上げられてきた.また,マネジメント・コントロール領域においても,コントロール手段として人々の同調圧力を利用する文化的コントロールというコントロール手法が提唱されている(Merchant and Van der Stede 2017).一方で,同調圧力が最適なマネジメント・コントロールに与える影響について,数理的に解析した研究はいまだ見られなかったことが,同調圧力に注目した理由である. 数理モデル分析では,Heinle et al. (2012) やFeltham and Hofmann (2007) の定式化を参考に,一般的なマルチ・エージェントのLENモデルに追加的な心理コストとして同調圧力を加えた.その結果,同調圧力が,契約の効率性にポジティブな影響を与える場合と,ネガティブな影響を与える場合の双方あることが明らかになった. 研究成果は次年度に開催される国際学会報告に投稿し,アクセプトされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,先行研究の検討ならびに数理モデルの構築を行う予定であったが,そのいずれも行なうことができた.また,研究成果は各種研究会で報告の機会を得,多くの有益なコメントを得ることもできた.本研究は当初の計画通りに進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,すでにアクセプトされた国際学会での報告を行い,海外の研究者からもコメントをもらい,さらに内容をブラッシュアップさせ,英文査読誌に論文を投稿する.また,同調圧力以外の心理的側面にも着目し,新たな数理モデルの構築も試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に複数の国際学会で報告するために,当年度の使用額を抑えたため.
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