研究課題/領域番号 |
18K12897
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 太一 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 講師 (10779771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 同調圧力 / マネジメント・コントロール / 行動契約理論 |
研究実績の概要 |
本研究では,従業員間で同調圧力が働く場合のマネジメント・コントロール・システムのデザインについて,数理モデル分析を通じて検討している.用いている数理モデルは線形の報酬関数,負の指数型効用関数,および正規分布に従ったノイズ項という特徴を持ったいわゆるLENモデルであり,ここに自身の選択した努力水準と他者の選択した努力水準の差に関する二次関数型の心理コストを導入した.本年度は新型コロナウイルスの影響で,学会報告の機会には恵まれなかった.ただし,前年度投稿した国際的な学術誌から,引き続き査読を受けている.査読対応を通じて,モデルのブラッシュアップを行った. その他に,個別受注契約における目標原価の設定について,数理モデル分析を実施した.この研究では,政府と契約企業間の個別受注契約を取り上げ,政府から契約企業の原価低減努力の水準が観察不可能であり(モラル・ハザード),かつ政府から契約企業の原価低減能力が観察不可能である(アドバース・セレクション)状況を仮定して,標準的なLENモデルを応用して分析を実施した.分析の結果,モラル・ハザードのみの状況よりも,アドバース・セレクションも同時に起きる状態のほうが,政府が契約企業にかける原価低減インセンティブが弱くなること,および政府・企業間の原価低減能力に関する情報の非対称性が縮小するほど原価低減インセンティブが強くなることが明らかになった.したがって,政府がコスト・データベース等の作成を通じて,契約企業の能力に関する情報を収集することの有用性を示唆することができた.この研究の成果は,2021年3月にAsia-Pacific Journal of Accounting and Economicsに採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度投稿した学術誌の査読対応を通じて,モデルの改定を行った.新型コロナウイルスの影響で学会報告は思うようにできなかったものの,研究自体はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き査読対応を行ない,国際的な学術誌への論文掲載を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,学会出張がすべてキャンセルとなったため. 英文校正料金,論文投稿料,書籍代などに充てる予定である.
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