本研究では,従業員間で同調圧力が働く場合のマネジメント・コントロール・システムのデザインについて、数理モデル分析を通じて検討した。特にエージェントの異質性に注目し、同調圧力が報酬契約にどのような影響を及ぼすのかを検討している。主な結果は、次の通りである。エージェントの同調圧力に対する選好が均質な場合、プリンシパルがエージェントの生産性とcongruentな業績指標を設定できれば、同調圧力は常にプリンシパルに不利に作用する。一方で、エージェントの生産性とcongruentな業績指標を設定できない場合、エージェントのリスク回避度次第では、同調圧力がエージェント間の努力配分を改善する可能性がある。さらに、エージェントの同調圧力に対する選好が異質な場合、努力水準が低いエージェントだけが同調圧力を感じると、たとえcongruentな業績指標を設定できたとしても、プリンシパルにとって望ましい努力配分が導かれる可能性がある。 こうした結果については、一昨年度投稿した国際的な学術誌の査読プロセスが依然続いている状況である。査読プロセスの中で査読者から数多くのコメントをもらったため、それらのコメントを反映して、数理モデルの改善、あるいは論文本文の修正を行った。 その他、主観的業績評価におけるバイアスについて、先行研究の調査を行い、調査結果について論文を発表した。
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