本研究では、組織学習を促進する多様性に対して、異なる価値観の統合という視点から、管理会計の役割を経験的研究を通じて明らかにすることを目的とする。本研究の2020年度の実績は以下のようになる。 まずは、2018年から継続して実施してきたある環境保全に関するプロジェクトに対するインタビュー調査結果について、2つのテーマに関連して、国内国際学会において報告を行った。具体的には、2020年7月開催されたCritical Perspectives on Accounting Conferenceでは、異なる価値観を持つ企業、NPO団体の協力関係に、どのように会計の実践がかかわっているのかについて報告を行った。また2021年2月開催された2020年度日本原価計算研究学会関東関西合同部会では、企業のマネジメントコントロールシステムが、どのようにサスティナビリティの取り組みを支援するかについて報告を行った。今後それぞれ異なる論文として投稿する予定である。 また、かねて行ってきた日本的集団主義の価値観の理論的フレームワークを利用した事例研究については、ジャーナルの投稿に向けての論文を取りまとめている。 研究期間全体を通じて、コンテクストは異なるが、様々な意味において、管理会計やマネジメント・コントロールがどのように異なる価値観の統合にかかわっているかについて経験的研究を蓄積することができた。 最後に、「異なる価値観の統合」という視点を企業組織内における個人間、部門間の相互作用から拡張して、企業間、企業とNGO団体などの関係に着目して、新しい研究プロジェクトを開始した。今後このような主体間の相互作用による異なる価値観の統合が、どのように会計実践と関連していくのかについて研究を展開していく予定である。
|