研究課題/領域番号 |
18K12902
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
北田 皓嗣 法政大学, 経営学部, 准教授 (90633595)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サステナビリティ / マテリアルフローコスト会計 / マネジメントシステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、企業が環境経営指標をマネジメントコントロールシステムと関連付けるプロセスを解明することである。具体的には、組織内で複数の環境管理手法がどのように共存し、経営活動とどのように関連しているか、また、内部と外部の環境アカウンタビリティの連続性と整合性に着目している。 過年度に実施した調査のデータ分析を通じて、マテリアルフローコスト会計(MFCA)の適用を推進するマネジメントコントロールシステムの設計について詳しく調査した。その結果、MFCAに関連する環境管理会計システムのデザインは、エンドオブパイプとマテリアルフローの両方を基盤としていることが明らかになった。そして、それぞれの環境管理会計システムに対して、異なるマネジメントコントロールシステムがその利用を促進していることが明らかになった。 具体的には、エンドオブパイプ型の環境管理会計の利用には全面的なマネジメントコントロールが、マテリアルフロー型の環境管理会計には人事的なコントロールを中心とした適切な人材活用が重要であることが示された。これらの結果は現在、学術ジャーナルに投稿中であり、査読と修正の段階にあります。 本研究は、環境経営の課題を克服するために、単一の計算技術だけでなく、システム間の補完関係やアカウンタビリティの連続性に着目することの重要性を示している。今後の研究は、これらの視点をさらに深化させ、環境経営の実践における意義と効果を明らかにすることを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ分析を行い,その結果をジャーナルに投稿する段階にあり,概ね順調に進展している。ただし,ジャーナルへのアクセプトに,当初の予定より時間がかかっており,共同研究者と協力しながら対応を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ここ数年,サーキュラーエコノミーの社会的な普及により本研究計画で分析の対象としている資源生産性の管理は,企業の戦略上の重要性が高くなり,他社との連携や代替材料,新規技術の開発などが進められている。これに応じてサーキュラーエコノミーへの移行関連の事業を実施するために資金調達や,資本投資を行う企業も増加しており,組織外部への情報開示においても重要になってきている。 これらの問題は本研究計画における社内でのマネジメントと,外部へのアカウンタビリティの連携の文脈でも非常に重要なテーマとなっている。資源生産性管理の文脈における内部マネジメントと外部へのアカウンタビリティの関係を明らかにするために,今年度は企業の報告書のテキスト分析や企業への聞き取り調査を実施してきた。この結果,まず,TCFD提言に基づく開示では、リスク情報が主に占め、サーキュラーエコノミー関連情報は機会として開示される傾向にあることが明らかになった。次に、サーキュラーエコノミー関連の技術開発は、多様なステイクホルダーと連携しながら進められる一方、リサイクル技術や代替材料の開発に偏るため、研究対象の多様性は限定的であることも示されている。これらの結果を論文としてまとめ,ジャーナルへの投稿をすることで研究計画を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの蔓延を受けて,国内への調査のための出張や,国内外での学会発表や研究打ち合わせのための出張を実施することができなかった。来年度はコロナの蔓延状況を踏まえて実施する予定である。
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