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本研究期間を通じて、サーキュラーエコノミー(CE)に関する会計的視点からの理論的・実証的検討を進めてきた。最終年度においては、サーキュラーエコノミー型ビジネスに特有のコスト構造に焦点を当て、資源循環を前提とする事業モデルが従来の線形経済型モデルといかに異なるコスト構造を持ちうるかを、原価計算研究学会関東関西合同部会(関西大学開催)にて報告した。この研究では、再使用・再製造・リサイクルを中核とする業態において、初期投資、循環フローの管理コスト、残存資産価値の変動がコスト行動に与える影響を概念的に整理した。 また、2024年度を中心に、サーキュラーエコノミーに関する情報開示と国際的政策動向に関する研究を進めた。学術誌『會計』においては、「サーキュラーエコノミー情報開示の現状分析」(205巻1号)を発表し、日本企業における開示実態と課題を実証的に示した。加えて、宝印刷調査研究報告において「EUの経済戦略が世界を巻き込みつつある」と題し、CEに関連する法制度や報告基準(特にCSRDおよびESRS)を俯瞰し、企業報告実務への影響について論じた。これらは、サステナビリティ開示における新たな基準の浸透過程と日本企業の対応状況を明らかにするものであった。 さらに、北田智久氏およびThomas Guenther教授との共同研究により、企業の廃棄物発生量がコスト構造およびコストビヘイビア(特にスティッキネス)に及ぼす影響についての実証分析を行い、社会関連会計学会合同部会にて報告した。分析の結果、廃棄物の削減努力がコスト構造に中長期的な変化をもたらしうることが示唆され、今後のCE推進における管理会計的アプローチの重要性が再確認された。 以上の成果を通じて、サーキュラーエコノミーを支える管理会計・情報開示の理論的・実務的基盤の構築に貢献することができたと考える。
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