研究課題/領域番号 |
18K12906
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研究機関 | 静岡産業大学 |
研究代表者 |
太田 裕貴 静岡産業大学, 情報学部, 講師 (70779834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 設備投資の効率性 / 経営者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は設備投資の効率性に関する包括的な実証分析を行うことで、企業経営者と企業外部者の双方に有用な証拠を提供することである。 初年度で注目したのは非効率な設備投資である。過剰投資は非効率な設備投資の1つであり、正味現在価値(Net Present Value: NPV)が負であるにも関わらず実行される設備投資のことを指す。先行研究では、過剰投資が将来業績の悪化を導く可能性があることが報告されている。したがって、企業の将来業績に関心を有する多くの利害関係者にとって、企業の過剰投資の傾向を予測することは重要な意義を有する。 初年度は企業経営者が過剰投資を行う要因を検討した。具体的な要因の1つとしては経営者の在職期間の長期化が挙げられる。すなわち、任期が長期化した経営者 (社長) に対して過度に権力が集中することで周囲からの牽制が効かなくなり、本来であれば非効率な設備投資計画であるにも関わらず、それを実行してしまう可能性があるのである。これは経営者による「帝国建設」(empire building)と呼ばれる。 初年度の実績としては上記のテーマに関して1本の論文にまとめた点が挙げられる(現在、査読対応中)。論文では、日本企業を対象として経営者交代後の在職期間と設備投資額の関連性をアーカイバル・データを用いて検証した。実証分析の結果、経営者交代後の在職期間が長期化するほど設備投資額が増加傾向を示すことが明らかになった。さらに、設備投資の効率性に注目した場合、在職期間の長期化に伴い実施される設備投資が過剰投資に該当する可能性が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する研究領域の先行研究を渉猟したうえで検証すべき仮説を構築し、実証分析に必要なデータの整備が実施できたことで、初年度から論文をまとめることができた。企業経営者が非効率な設備投資(過剰投資)を実施する要因の1つを明らかにできたことを踏まえて、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、引き続き企業経営者が非効率な設備投資(過剰投資)を実施する要因を検討することである。加えて、設備投資以外にも研究開発投資やM&Aなどの他の企業投資の影響を考察することを考えている。 現在は「経営者の年齢と研究開発投資の関連性」というテーマで研究を進捗させている。海外の複数の先行研究が退職時期が近付いた高齢の経営者が長期的投資の1つである研究開発投資を削減する傾向にあることを報告しているが、日本企業を対象にした研究は報告者の知る限りいまだに存在しない。研究開発投資は企業の持続的な成長を達成するうえで必須であり、将来業績の予測の際には重要な情報源の1つとなり得る。したがって、研究開発投資の規模に影響を与える要因を検討することは重要な意義を有すると考えられる。 次年度では研究成果を論文としてまとめて公表することを目指す。さらに、研究成果を学会や研究会等で積極的に報告することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は年度末に購入した海外書籍の搬入が遅延したことによるものである(現在も手配中)。これらの書籍は研究の質的向上に必要不可欠なものであり、今後の搬入を待ちたいと考えている。
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