研究課題/領域番号 |
18K12907
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
丸山 恭司 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (20779798)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公監査 / 地方自治体 / 行政監査 / 行政経営 / 英国 |
研究実績の概要 |
本研究は、わが国の地方自治体における行政監査の実効性を高めるための方策について、主として英国の自治体監査委員会(UK Audit Commission)が公表した報告書群の分析を通じて示唆を得ることにある。英国の自治体監査委員会が公表した監査結果について収集がほぼ完了し分析を進めている。英国の自治体監査委員会の報告書においてとりわけ多くの検証がなされている分野は、青少年の育成に関する分野である。1980年代から2000年代に共通する大きなテーマとなっていた。さらに「内部管理」「財務」「情報の活用」についても数多くの報告がなされており、ITC活用に関しては、情報技術の進展に応じ相応の対応を行うよう自治体に求めていた。 わが国の行政監査の監査結果について検証を継続している。行政監査の実施は、法律上義務化されていないこともあり、町村などの小規模自治体では、実施されていない自治体がほとんどである。大規模自治体であっても、防災対策、物品管理など個別の行政分野に限定されたテーマが選択されることが多い。地方自治法が2017年に改正、2020年4月から施行され、都道府県および政令市において内部統制制度の構築が義務化された。これに呼応し内部統制を主眼とする行政監査が実施されたことが近時の大きな特徴であった。さらに本研究では、自治体の公共調達の効率性を検討する上で補助金の交付手続やその後のモニタリングの検証が重要となる。公共調達に関する国際的なガイドラインについて翻訳を行い公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度では、これまでの海外調査の成果を踏まえて、英国の実態調査を行うことを計画していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大のために海外渡航が不可能となった。英国の自治体監査においても、コロナ禍のために監査業務に滞りが生じ、監査日程の遅延が生じるなど調査への協力を得ることも難しくなった。この点、英国会計検査院(NAO)は、自治体の監査結果が適時に公表されない点について懸念を表明している。 加えて、コロナ禍による影響は、わが国でも同様であり、緊急事態宣言等の発出をうけて国内の移動あるいは庁舎への部外者の立ち入りが制約された。十分なエビデンスに基づいた研究成果を導くだけのヒアリング調査の実施が妨げられた。 英国においては自治体監査委員会廃止後には、それぞれの自治体が外部監査人を監査法人と契約して選任することとしている。外部監査人の選任や制度全体のモニタリングを公共部門監査人選任機構(Public Sctor Audit Appointments)が監査法人等の監査人の選任、監査報酬などのガイドライン、制度のモニタリングを行い、その結果を公表している。本研究助成による研究成果としてPSAAのChief ExecutiveであるTony Crawley氏とネットワークを構築できた。同氏に代表される本研究で培ったネットワークを活用し、英国の自治体監査についての近時の状況についての情報収集や意見交換を通じて研究を加速する。
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今後の研究の推進方策 |
実態調査に力点をおいた研究方法に依存した場合、引き続き、新型コロナの終息がなかった場合には研究の継続が困難となる。そこで、これまでに収集したUK Audit Comissionが公表した報告書のテキストの分析について、時系列の変遷、監査の実施方法の変化、監査結果により自治体の改善を求める事項を精査し、研究の深化を図る。わが国の行政監査の改善に向けたさらなる示唆を導き、学会での報告、論文のとりまとめを進める。英国の自治体監査では、Social Well beingに関する監査結果が多数確認されている。こうした分野について英国自治体監査委員会のみならずウェールズ監査局などイングランド以外の公的部門の監査結果を研究対象として拡大し、わが国の行政監査の新展開にむけた方策を検討する。さらに、研究成果を実務に展開するために地方自治体との意見交換や自治体等が主催する主催する研修会あるいは講演会において研究成果を示し、本研究の成果を自治体監査実務への展開をはかり、社会への還元を積極的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた国内外の調査が新型コロナウイルスの蔓延により出入国や移動に制限なあったために旅費支出額が減少したため。
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