研究課題/領域番号 |
18K12907
|
研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
丸山 恭司 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (20779798)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 公監査 / 地方自治 / 監査委員 / 行政監査 |
研究実績の概要 |
本研究の主眼は、地方自治体監査委員監査における監査結果・監査意見のあるべき姿を導出することにある。本年度においては、引き続き、英国地方自治体監査委員会(UK Audit Commission)がこれまでに作成し、英国政府にアーカイブされている監査結果についての分析を継続してきた。英国地方自治体監査委員会は、独立性を保持し、英国の地方自治体を横断的に監査しており、その時代のニーズに合わせて問題点や改善すべき点を指摘し、改善に導いてきたことを検証した。 また、令和4年度中の英国地方自治体の監査については、コロナ禍の影響を受けて、監査結果の遅れや、監査の遅れが英国の他の公的部門の監査に影響することが報告されている。英国においては、地方自治体の監査は、監査法人と監査契約を締結し,監査を受けることとされている。2015-16年の監査結果においては、ほぼすべての自治体の監査結果は期限どおり実施されていたが、2019-20年の監査結果については、45%の自治体しか期限を遵守できなかったとの報告がなされている。前例のない社会的危機の状況における公的機関の監査のあり方について示唆に富む現象が見受けられた。 わが国の地方自治体の行政監査におけるコロナ禍に関連した監査について比較を行った。わが国の監査委員監査にかかる監査結果の全体を俯瞰で見たときにコロナ禍に着目して重点的に監査を行った自治体は確認できていない。一部の自治体で、コロナ禍における事務に着目して監査を行っていたものの、合規性や正確性に着目するにとどまっていた。英国においては、地方政府にかかる財政の持続可能性に言及する監査しており、英国と比較したとき、こうした監査のあり方には改善の余地があることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国での現地調査をコロナ禍により断念せざるをえない状況となったことから、インターネット上で公開されている英国監査委員会(UK Audit Commission)の監査結果を中心にデータの収集解析をおこなっている。全体的な傾向として社会福祉などの個別テーマについては、その時代の要請を反映している。その反面、自治体のガバナンスに関してはより組織全体について包括的に評価している傾向があると解釈している。また、わが国の自治体監査委員が作成し、公表している監査結果を収集するためにpythonを用いたスクレイピングの手法を用いて監査結果のデータの収集を行った。地方自治体のサーバに負荷をかけないように慎重に作業をすすめており、時間を要しているが、すべての都道府県については公開されている監査結果の収集ができる環境を構築できた。おおむね過去10年程度の監査結果についてインターネット上に公開されていることを確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
わが国の地方自治体が、インターネットで公表している監査結果について網羅的に情報収集することを継続し、なるべく多くの地方自治体の監査結果にかかるデータの収集をおこなう。また、収集したデータについては、PDFの形式となっていることからテキストファイルに変換し、テキストマイニングの方法で一定の傾向が出ていないかを検証する。また、地方自治体の監査委員が行う監査には、様々な種類がある。都道府県のデータを見る限り、定期監査については、その多くの部分が表形式で、監査結果と監査意見が混在する形となっている。 これらに比べて、行政監査や内部統制監査については、監査の着眼点が具体的に設定され,監査の結果も焦点が定まっているとの心証を得た。単に自然言語処理を行うだけではなく、地方自治体監査委員監査に固有の言い回しなどに留意しつつ、監査論の見地からわが国の監査結果について批判的に考察し、研究の最終年度のとりまとめを行う。加えて、研究と並行して、監査委員あるいは監査委員事務局職員に向けた講演、研修等において、本研究の成果を積極的に還元していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い国外の調査を中止したことから研究方針を大幅に変更することを余儀なくされた。研究目的を実現するために別の方法を模索し、監査結果のデータ解析を中心に行う手法に研究の重点を見直した。そのために、当初の計画と異なる支出となり、次年度使用額が生じることとなった。
|