研究課題/領域番号 |
18K12909
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
濱村 純平 桃山学院大学, 経営学部, 准教授 (30803580)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相対的業績評価 / 寡占競争 / 開示 / 任意開示 / 強制開示 / 非協力ゲーム理論 / 戦略管理会計 |
研究実績の概要 |
本研究は製品市場での企業間の寡占競争を仮定し、経営者に対する相対的業績評価について考えている。経営者に対する相対的業績評価については、経済学、ファイナンス、会計学で蓄積があるだけでなく、業績評価システムがステークホルダーに公表されるなど、実務的な関心も高い。アメリカではすでに、業績評価システムはproxy statementにおいて強制開示となっていたが、日本でも2021年から強制開示となった。どこまでアメリカに近い状態になるかはわからないが、このような業績評価システムの開示は企業にとって、また、社会にとってよいことなのだろうか。本研究ではこの業績評価システムの開示について、相対的業績評価に焦点を当てて分析する。そのため、契約理論による分析よりも、寡占競争を仮定した分析のほうが適しているといえる。 昨年度はこの研究の分析を行ない、ワーキング・ペーパーを完成させ、SSRNより公開した。現在この論文はアメリカ会計学会のannual meetingに投稿中である。この結果の成否によって、この研究を投稿するジャーナルを選択したいと考えている。なお、本研究については、昨年度末の日本経済会計学会のワークショップにて報告を行なった。 研究実施計画においては、昨年度のうちにこの分析を済ませてワーキング・ペーパーを完成し、査読付き国際英文ジャーナルに投稿することを目標にしていた。しかし、新型コロナウイルスの影響でほかの研究者との意見交換や学会発表等の機会が減少してしまい、執筆が少し遅れることとなった。とはいえ、ワーキング・ペーパーの執筆が完了し、公表されているという意味で、概ね順調に進行しているともいえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は分析を完了し、ワーキング・ペーパーを公表した。その意味では概ね研究計画どおりに進んでいるように見えるが、この論文を査読付き英文ジャーナルに投稿するまでが本研究の実施計画であった。そのため、1年間の延長申請を行なった。 このような状況になった原因は新型コロナウイルスの影響による発表機会や、ほかの研究者との意見交換の機会の減少である。研究実施計画にあるように学会や研究会での発表をもとにして、ワーキング・ペーパーをブラッシュアップしていく過程が必要になる。また、本来であれば、ワーキング・ペーパーとして公表する前に、国内の研究者との意見交換を通じて研究をより精緻化していくはずであった。しかし、新型コロナウイルスによりこの機会が失われたことで、ワーキング・ペーパーとして執筆する時期も少し遅れが出てしまった。 しかしながら、何とか昨年度内にワーキング・ペーパーの執筆まではこぎつけることができた。これはひとえに、それまでの3年間の科研費による助成があったためだと考えられる。これにより、本研究の基礎となる部分のモデルや、ケースなどの情報を収集することができた。そのため、ある程度のところまでは研究をすすめることができたといえる。 しかし、繰り返しにはなるが、研究が完了したわけではない。研究実施計画にもとづけば、論文を国際英文ジャーナルに投稿するまでが本研究の計画に含まれている。これを達成するために、現在、アメリカ会計学会への報告エントリーを行なっている。査読があるため、必ずしも通るとは限らないが、この結果をもって本研究の投稿先を決めようと考えている。もし報告できたら、海外の会計学者からのコメントを持たうこともできるため、それをもとにワーキング・ペーパーをブラッシュアップする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には本研究を査読付き国際英文ジャーナルに投稿する予定である。その前までに、いくつかの段階を踏む。まず、現在投稿中のアメリカ会計学会のannual meetingに通った場合、その学会での報告を経て会計学ジャーナルに投稿することを考えている。また、本研究は日本管理会計学会でも報告予定である。もし、会計研究者から好意的な意見を貰えれば、会計学ジャーナルに投稿することを前向きに検討したい。ただし、本研究は経済学やファイナンスといった分野とも大きく関連する。そのため、会計研究者からの反応によっては、こういった経済学やファイナンスといった分野のジャーナルに投稿することも検討する。 いずれにせよ、このあと重要になるのはほかの研究者からの意見をもらったあとのブラッシュアップと、投稿先の選定である。昨年度はこれがほとんどできなかったので、今年度はここに集中したい。そのため、可能な限り研究会などでの発表を行ないたいと考えている。なお、本研究と最も近い研究は海外の研究者がワーキング・ペーパーとして2本あげているのと、Review of Industrial organizationに1本存在するため、これらの動向も投稿先を選定する上では考慮に入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、昨年度の前期は国際学会そのものがほとんど開催されなかった。また、国内の学会もそのほとんどがオンライン開催となったため、出張旅費が必要なくなった。また、国際学会そのものがなくなったため国際学会に提出する論文のプルーフ・リーディング料も必要なくなった。その結果、本来必要であった額が必要でなくなり、次年度に持ち越すこととなった。今年度はいくつかの学会がハイブリッドで開催されたり、国際学会も(オンラインではあるが)開催されるようになってきたため、それぞれ費用が必要となる。
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