研究課題/領域番号 |
18K12912
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
河瀬 宏則 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (30755781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自社株買い / Auction買付 / ToSTNeT-3 / ディスクロージャー / ペイアウト |
研究実績の概要 |
本研究は、自社株買いにかかる2つの買付手法(Auction買付とToSTNeT-3を用いた自社株買い)に関する情報開示の状況を調査するものである。このうち、平成30年度の研究実績として、後者に関してはワーキングペーパーをSSRNで公表し、同ペーパーをもとに国内で学会発表を2回行っている。現在は学会発表で受けたコメントをもとにワーキングペーパーを修正する段階にある。前者については、Auction買付については未だデータ収集の段階である。今年度中に分析を終わらせ、ワーキングペーパーにし、検討を進める形にしたいと考えている。 ToSTNeT-3に関する研究については、昨年度に日本会計研究学会と日本経営財務研究学会にて報告を行った。主な結果は、先行研究で実質的な相対取引であると推測される、ToSTNeT-3による自社株買いについて、より多くの投資家からの応募が見込まれると考えられる、金曜日に公表し、月曜日に買い付けるというパターンが、他の曜日と比べて有意に低いというものである。この結果は先行研究に対して、発表タイミングの観点からの実証結果を提供した点で貢献しているといえよう。そこで得られた主なコメント・示唆は、日本の制度環境を丁寧に説明すること、という点である。特に、諸外国においてToSTNeT-3という制度は存在しないため、ToSTNeT-3の成り立ちや目的など、未だ説明不足であった点に気付かされた。また、同研究は2008年から2012年のデータを利用しており、今後の査読審査においては、より近年のデータを含めた分析結果を提供されることが予想される(実際に他の研究プロジェクトにおいては、匿名のレフェリーからこうした指摘を受けた)。以上のような状況であり、改訂作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ToSTNeT-3に関する研究について、平成30年度は二度の研究報告を行った。既にSSRN上でワーキングペーパー(題名:Off-Auction Repurchase Announcement Timing)を公表しているが、二度の研究報告を踏まえて、現在は改定中である。 現在までのToSTNeT-3に関する調査結果は、2008~2012年のデータを用いて、ToSTNeT買付が何曜日に公表されたかを調査した。そこでは、公表から買付終了までの時間が相対的に長くなる金曜日の公表を回避する傾向が観察された。こうした結果は、特定株主との実質的な相対取引を意図しており、そして特定株主以外の取引機会を排除しようとの意図を思わせる。 Auction買付については、現在もデータを取得している段階である。具体的には、買付開始の公表に対応した、買付終了の公表開示が存在するかどうかのデータを取得しているが、これをeolで提供されているTDnetを通じて開示された情報一覧から確認している。2007年のデータに限定した予備調査は完了しているが、それ以降のデータを取得している。ただし、情報開示行動が普及したのか、近年になるにつれて買付終了が公表されないケースは少なくなっている点が懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
ToSTNet-3に関する研究については、今年度の前半を目処に改訂を終わらせ、投稿作業へと移ることを計画している。Auction買付に関する研究のデータ入力作業は、着実に作業を進め、今年中には分析を終わらせることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに自社株買いデータベースをどのタイミングで購入するかを検討中である。
自社株買いデータベースについて、これまで購入しようと考えていたデータベースのベンダーの親会社が変更になり、契約条件に変更があった。これまで、予算や契約条件に見合わず、購入を見送ってきたが、現在では可能かもしれない。研究の進捗に合わせて、新たにできることがあるかどうか、確認中である。そのため、海外渡航費に充てる予定の予算の執行を保留している。
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