本年度は最終年度として主に学術成果の出版に向けた活動を行った。最終年度は日本管理会計学会2023年全国大会にて、「経済学的な概念を軸とする日本の戦略管理会計研究における戦略概念の再検討」というタイトルで報告を行った(濱村純平氏、吉田 政之氏と共同報告)。また、成果の一部として現在共同で編集中の書籍に一本論文を執筆した。2024年中に出版予定である。
本研究は、企業の経営計画とイノベーションに焦点を当て行ってきた。2018年には、戦略と管理会計の接合に関する先行研究をレビューし、大手製造メーカーへのインタビューを実施した。2019年には、新たなリサーチサイトとしてゲーム産業の企業を得て、戦略形成と管理会計の役割を調査した。また2018年度の調査結果をもとにローハンプトン大学での国際学会で報告し、経営計画段階において会計を使ったコミュニケーションが組織的な学びを促進することを示した。2020年には、株式会社小松製作所の研究結果の公表を行うとともに、研究成果の社会普及の一環としてオンライン講座を開発し公開した。 2021年以降はコロナ禍での調査遅延が発生したが、Zoomを用いたインタビューを多数実施し、20時間を超えるデータを収集するとができた。その成果として2021年には、日本原価計算研究学会で日本企業の経理部門の役割について報告し、『企業会計』でROIC経営の導入に関する連載記事を発表した。2022年には、経営計画に関する文献調査の一部を『管理会計のエビデンス』に執筆し、経営計画の柔軟な運用がイノベーションにつながることを示した。また日本会計研究学会九州部会で計画段階による戦略マップの柔軟な運用に関する事例研究を報告した。
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