研究課題/領域番号 |
18K12916
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 雄 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (50796307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 震災遺構 / 記憶 / 地域コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究は、現代社会における災禍との向き合い方を、災害遺構の保存/解体プロセスの調査を通じて考察する。具体的には、スマトラ島沖地震および東日本大震災という、歴史的津波災害を経験した二つの地域社会において、災害遺構がいかに保存/解体されてきたのか、そのプロセスを主としてフィールドワークによって明らかにする。震災発生から時間が経過するなか、一方では公的資金の補助を受け保存される災害遺構があり、他方では合意形成や他との比較選別の過程で解体にいたる災害遺構がある。地域コミュニティを構成する様々なアクターの関係のなかで決定されていく保存/解体の論理に注目しながら、災禍の経験がいかに社会的に形成されるのかを明らかにする。 今年度は、岩手県大槌町の旧役場庁舎の保存/解体をめぐる調査を実施した。岩手県大槌町の旧役場庁舎は、東日本大震災で多くの役場職員らが亡くなった場所である。町民や遺族のあいだでも様々な意見の相違があるなかで2019年1月から2月にかけて解体された。2019年3月には、解体されて以降初の慰霊祭や追悼式の参与観察調査などを実施した。一方、スマトラ島沖地震最大の被災地であるアチェ特別州においては、現在観光スポットともなっているいくつかの災害遺構について現地でインタビュー調査を実施した。このほかアチェの情報や文脈に詳しい研究者を招聘し、東北大学で研究会を実施した(第4回災害人文学研究会、2018年10月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年4月より東北大学へ着任となり、研究体制の構築に時間がかかってしまった。また当初調査計画にない、しかし極めて重要と思われる事例である、大槌町の旧役場庁舎の解体をめぐる議論が急速に進み、この調査も進めたために、他の地域の調査を予定通り進展させることができなかった。しかしながら大槌町のケースは他の保存された災害遺構との対比において極めて重要な位置を占めると予想されるため、全体としては生産的な計画の軌道修正である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画一年目に実施することができなかった調査を、研究計画二年目に実施するとともに、研究計画一年目に培われたネットワークでの議論を通じて研究計画のアウトプットの道筋を定める。研究計画三年目は、関係学会での報告とディスカッションを通じて調査結果を論文化し投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定になかった国内調査を実施し、長期の海外調査を行うことができなかった。研究計画二年目において海外調査を実施する予定である。
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