研究課題/領域番号 |
18K12921
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
河 キョンジン 広島市立大学, 付置研究所, 准教授 (10754442)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | PR / 広報 / 映画 / 経営者 / 企業 / 産業 / 戦後 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後日本におけるPR概念の歴史的変容を、企業論・経営史研究の観点とメディア研究の視座から明らかにするものである。具体的には、1950年代から60年代にかけてPR概念を説明する諸言説が、誰によって、どのような思想に基づきながら形成されたかを検討し、それらの言説が対象にしていた企業と社会の関係/関係性が、当時のメディア、とりわけ「PR映画」というジャンルを通じていかに表象されたかを総合的に捉え、「日本型PR」の特徴を分析する。本研究の第一年度では資料収集を中心に基礎的調査を行った。研究実績の概要は、以下のとおりである。
1.資料収集:「日本型PR」における言説面の特徴を検討するため、戦後、PRの普及にかかわった知識人、経営者、マスコミ、映画産業(短編映画)の言説を中心に、書籍、雑誌、論文から関連資料を収集した。次に、表象面の分析を行うために、次年度以降にデジタル化作業に取り組むPR映画の目録をつくり、対象となる映画の関連資料を収集した。
2.研究発表:戦後PRの普及におけるメディア、とりわけ映画の役割について日本広報学会・広報研究深化交流部会で報告を行った(「1950年代における企業自我の形成――メディアを中心に」)。発表内容をさらに発展させた研究論文「資生堂PR映画における〈企業自我〉の表象」が『東京大学大学院情報学環紀要・情報学研究』95号に掲載された。そのほか、一般向け活動として、オンライン媒体・PR Table Communityと行ったインタビューが「現在の動画ブームと、1950年代のPR映画に共通する“仕掛け”がある」というタイトルの記事として公開された。また、東京大学大学院情報学環吉見研究室主催の講演会で「戦後の産業映画/PR映画から紐解く、新時代の企業コミュニケーションのあり方 」というタイトルで報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一年度の半ばから勤務先が東京から地方に変わり、所属機関の変更に伴う手続き等もあって研究遂行のための環境が整備されるまで少し時間がかかった。また、移動に伴い、資料調査のために東京出張が必要となったことから、当初の予定よりも旅費が大幅増額されるなど、申請段階では予期しなかった変更点があった。しかし、第一年度は主に資料調査や整理を中心とする基礎研究にあてていたことや、資料調査がスムーズに進み、一部内容を研究論文としてまとめることができたことなどを考慮し、総合的に考えて「おおむね順調に進んでいる」と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
第二年度では、表象面でPR映画の分析に力を入れたいと考えている。今年度に作成した目録に基づき、「日本型PR」の特徴を描き出す上で対象映画を選別し、デジタル化作業と映像分析に取り組む。あわせて対象となる映画の関連資料を検討し、関係者のインタビューなども行い、立体的な分析を行うことを意識したい。言説の面では、第一年度に収集した資料を中心に、戦後PRの普及にかかわる要因を主要なアクター(経営者、知識人)に分けて検討する。成果は、前年度同様、学会・研究会での報告を踏まえて論文の形で公表することを目標に進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算執行の上で発生した差額(24円)は、翌年度分予算と合わせて使用する。
|