研究課題/領域番号 |
18K12922
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
武岡 暢 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90783374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 商家同族団 / 職業 / 都市 |
研究実績の概要 |
都市社会学と労働社会学の分野間分業がいかにして成立したか、を跡づけるために肝要なのは1950年代前後の諸著作である(この時期は日本でも欧米でもそう変わらない)。 本研究は本年度、主として中野卓の『商家同族団の研究』に焦点を当て、調査研究を実施した。『商家同族団の研究』においてはどちらかといえば「商家」よりも「同族」の方に重点が置かれ、その意味では中野自身、農村社会学や家族社会学の系譜を強く意識している。しかしながら本研究にとって無視できない側面として、商家同族団の結合の内実にとって空間的な近接性を重視し、繰り返し論じている点が挙げられる。これは実は中野が「主として近世までの都市」に対象を定位したことと深く関連している。近代以降のモビリティの増大によって、都市社会は同族の居場所を急速に狭めていくことになるわけだが、このことは農村社会との対比においても示唆的である。 『商家同族団の研究』はこうした文脈から読まれることが比較的少なく、本年度の本研究はこうした角度からの読みを、関連する諸文献と照らし合わせながら進めて行くことに注力した。加えて、東京大学文学部に所蔵されている、中野が『商家同族団の研究』執筆に際して用いた資料の原典を実見し、その概要を把握した。 結果的には当該資料は近世のものが大部分で、地理的、空間的なデータに再構成することは困難であった。問題は、中野が空間的近接性を強調した、その発想の淵源は(あるいは思想的脈絡は)奈辺にあったのか、である。そのことを追究するなかでこそ、その後の社会学における分野間分業の問題点を剔出することが可能であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究にとって重要な著作である『商家同族団の研究』について集中的に検討を進めることができ、さらには原典資料にも当たることができた点において、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は中野卓から再度尾高邦雄の諸著作へと舵を切り直し、当時の調査研究が胚胎していた社会学方法論上の可能性と限界について検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集に必要な文献調査が予定より進捗が遅れ、それに伴って図書の購入が後倒しになり、物品費の執行が遅れた。また、研究成果報告のために予定していた国内出張が国外出張とバッティングしたため、旅費も予定より少ない執行となった。さらに人件費も、所属大学が変わった関係もあり支出できなかった。翌年度には人件費を中心に、従来の研究計画に上積みするかたちで使用していく計画である。
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