研究課題/領域番号 |
18K12922
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
武岡 暢 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90783374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 職業 / 失業 / 被差別部落 / 食肉産業 |
研究実績の概要 |
今年度は研究課題の根幹を成す「労働」概念や現象に関連したいくつかの領域における進展を見た。 (1)失業と「反生産」論:失業状態があぶり出すのは「就業」状態の相対性である。もっとも、それは常にそうであるわけではなく、失業が就業への強迫を強化する場合も少なくない。 (2)被差別部落と職業差別:被差別部落に関連した社会学研究は少なくないが、関連した職業差別や特定の職業(食肉、皮革産業等)が部落民によって担われる実態やその問題に関する研究は多くない。こうした研究を中心的に担ってきたのは八木正であるが、八木の調査研究は十全に成果が発信、公開、分析されているとは言いがたい。 (3)「まなざしの地獄」:見田宗介の「まなざしの地獄」に一挿話のように登場する「履歴書の要る仕事/要らない仕事」の区別は、上述(1)と(2)の問題をつなぎ、さらにその他の一見すると無関係な多様な論点をつなぎ合わせる意味でヒューリスティックな意義が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様な論点に関して調査を進めたことによって、かえって中心となる「職業」や「労働」といった基本概念に関する検討を順調に進めることができた。大企業による雇用を典型イメージとすることは、学界内のみならず広く日本社会における通念でもあった。そのことは失業や就業といった状態に対する観念の偏りとして現象する。こうした「無徴」の標準とされる観念を浮かび上がらせることができたのは、多角的に基本概念の検討を進めることができたためであった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たるため、研究課題の仕上げとして、尾高邦雄の職業社会学の可能性について論じてみたい。今日の社会学の下位分野間分業に関する一種の「処方箋」として、尾高の職業社会学構想が有していた意義とその限界について考察する。さらに、こうした意義のある構想が十全に結実しなかった事情についても分析することによって、同様の事態が今後も出来する蓋然性をできるだけ減じたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックにより旅費の執行が難しく、代替的に物品に支出したが、若干の差額が生じたため、次年度使用額が生じた。しかしこれは少額であり、次年度の物品費として支出する予定である。
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