研究課題/領域番号 |
18K12924
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
佐野 潤子 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任講師 (00802141)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複数役割満足感 / 就労継続 / 共働き / 仕事満足感 / 家庭科教育 / キャリア教育 / 男女共同参画社会 |
研究実績の概要 |
本研究では、有職母親の就労継続の鍵となる複数役割満足感を高める要因を有職母親が受けてきた教育、意識などの視点から探究することを目的とする。さらに男女共同参画が進み、女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、合計特殊出生率が1.7を超えているノルウェーにおける有職母親にも同様の調査をし分析する。 2018 年度は調査票を設計し、先行研究をさらに深め、調査項目について先生方に専門知識の授与をお願いし、併せて学会発表などで指摘のあった点などを検討した結果、質問項目を精査し、2019 年度に質問紙調査を行う。記述統計、パス解析などから日本とノルウェーの働く母親の複数役割満足感を高める要因と現在の仕事、子育てとの関わり分析する。 2019年度の成果としては複数役割満足感についてまとめた投稿論文(査読あり)2019年3月「An Expansionist Theory における有職母親のMultiple Role の要因の検討」が『生活経済学研究』Vol.49,pp.27-39に掲載された。その他2018年9月「母親と父親の育児行動頻度と子育てに関するIT利用のかかわり―日米比較」日本家族社会学会第28回大会、同10月「IT 利用と子育てにおけるジェンダー」第38回家族関係学部会セミナー、同11月“The Effect of Mothers' IT Use on Maternal Fulfillment and Anxiety over Children's IT Use among Dual-Families”(Mari Nakagawa, Junko Sano, Rie Okamura) National Council on Family Relations,同11月「リスク選考におけるジェンダー~先行研究からの考察~」生活経済学会関東部会で有職母親の仕事と子育てに関する発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に日本とノルウェーの有職母親の調査票調査を行うことを試み、調査票を作成し、調査会社に見積もりを出してもらったが、当初の予定よりも費用がかかり、さらに調査項目と対象、人数を精査する必要があった。一方で、先行研究や学会発表によって先生方からいただいたコメントなどから有職母親の意識とともに父親の意識や育児行動も、母親の複数役割満足感の要因になる可能性も考え、2019年度に調査票を再度作成し、調査することとした。先生方のコメントを踏まえて、2019年3月「An Expansionist Theory における有職母親のMultiple Role の要因の検討」をまとめ、査読付き投稿論として『生活経済学研究』Vol.49,pp.27-39に掲載された。 2019年度はノルウェーのNTNU(国立科学技術大学)と本務校であるお茶の水女子大学との共同研究もスターとすることから、スカイプ会議、お互いの訪問によるワークショップなどノルウェーのジェンダー研究の先生方の意見もうかがう機会がある。ノルウェーの先生方のコメントも参考にして、質問紙調査票を作成し、実施する予定である。調査結果は記述統計、パス解析分析を行い、有職母親の教育背景、複数役割満足感を両国で比較し、複数役割満足感の要因について調べる予定である。また国内外の学会で分析結果を発表し、多くのコメントをいただき、さらに研究を深めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【2019年度】ノルウェーのNTNU(国立科学技術大学)のジェンダー研究センターの先生方とスカイプ、お互い両国の訪問の際などにご意見をお聞きする予定である。引き続き日本とノルウエーの女性労働の基本統計、先行研究を踏まえ、集めた情報から日本とノルウェーの有職母親の質問紙調査を作成する。調査結果を記述統計、パス解析で分析し、日本とノルウェーの結果を比較検討する。調査の内容や、解析について、NTNUの先生方や院生とノルウェーの共同研究としてデータ分析をする。研究会や学会で報告をし、国内外の先生方からコメントをいただく予定である。 【2020年度】日本とノルウェーの調査票の分析に基づき、調査票調査では明らかにならなかった点、あるいは新たに見いだされた視点について、日本とノルウェーの働く母親当事者、あるいは研究者にインタビューし、考察を深める。引き続き学会、投稿論文などで発表する。必要であれば父親の調査の実施も考えており、検討している。 【2021年度】 これまでの調査のまとめと発表を行う。日本で国際セミナーを開催し、NTNUのジェンダー研究センターの先生方との研究会・セミナーを予定している。議論を深め、研究成果を広く発信する。報告書の作成も考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際比較研究の場合、社会、経済状況の変化もあるため、調査時点を同時に揃えることを考え、2018年度と2019年度でそれぞれ行う予定だった有職母親の調査票調査をノルウェーと日本で同時に行うことにした。調査費の見積もりが各年度で使用を予定していた研究費では足りなかったため、前倒し請求もお認めいただいた。その後、学会発表や先生方のご意見などうかがい、さらに調査項目を絞り、対象者、人数など再検討した結果、2019年度に調査票調査を実施することとした。国際比較のため、調査費用がかかるため2018年度は他の経費で使用することをを抑えた。2019年度の調査費用に充てることを予定している。主な調査費用は質問紙調査と、ノルウエーのNTNU大学ジェンダー研究センター訪問、インタビュー調査の予定である。また国内外の学会発表や論文投稿といった機会も2018年度と同様、貴重な意見がうかがえるため、積極的に参加し、報告することを予定している。
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