研究実績の概要 |
本年度は、家族構造とジェンダーと労働市場の観点より自営業の安定性のメカニズムの解明をより進めるため、自営業における家族従業への参入メカニズムの解明、大型店舗が自営業の安定性に与える影響の把握、の2つに焦点を絞り研究を行った。前者の自営業における家族従業への参入メカニズムの解明については、分析をほぼ終えて解釈を進め、また同時に本研究の知見を共有するために学会報告、論文執筆を行った。後者の大型店舗が自営業の安定性に与える影響の把握については、予備的な研究を中心に行った。これまで本研究では標本調査によるデータを用いてきたが、大型店舗と自営業者数の地理空間的な関係を見出しにくかった。そのため、全数調査のデータによる観察を試みた。具体的には「国勢調査」(昭和55年, 60年, 平成2年, 7年, 12年, 17年, 22年, 27年)のデータを用いた。調査票情報の従属変数、独立変数となりうる変数を都道府県コード、市区町村コード、町字コード、基本単位区コード毎で集計した。その後、地域境界データを取得し、市区町村ごとでデータの可視化を実施した。また、大型店舗の地理空間的な情報を得るために前年度に購入した「大型小売店データ・ポイントデータ」を利用した。可視化された空間データを記述統計的に観察する限りでは、大型小売店数が小売自営業者数に地理空間的なラグを伴い影響を及ぼしている可能性が示された。とくに、大型小売店が増加した地域において、10年ほどのラグを伴い小売自営業者数の減少が観察された。
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