研究課題/領域番号 |
18K12928
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹田 恵子 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (70707314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 障害 / 医学関連論文 / テキスト分析 |
研究実績の概要 |
テキスト分析によって、産科・周産期・生殖医療における「障害」を扱った医学関連論文の特徴を調べた。特に、論文の発行年代、掲載雑誌の分野、筆頭著者の職業、障害の種類によって、用いられる語彙などが異なるかどうかに着目して分析した。その結果、論文の「背景」部分では8つの主題(妊娠と出産の問題・療育環境と制度の課題・専門療育における特別な支援・障害者の行動と機能の評価・在宅サービス・重症心身障害者への支援・心理的ストレスの検討と支援・障害児/者と健常家族の相互関係)、「考察」部分では9つの主題(保育における連携・妊娠と出産のリスク・人間の潜在力を生かす・当事者団体の活動・様々なサービスの提供・家族の過大なストレス・療育の工夫・障害の肯定・感情への着目)が抽出された。また、父親よりも母親へ着目する傾向が強いことも明らかにされたが、「医療職」による論文では、その傾向がひときわ強いことがわかった。また、分析対象論文において、障害児を扱うものが約9割を占め、成人した障害者の家族形成は研究課題として、ほとんど顧みられていないことも判明した。医学関連論文では、生殖に関わる「障害」はインペアメントとして着目される一方で、周産期の家族的、心理的、社会福祉制度的問題としてとらえられる面もあり、当事者に必要な支援を探ることへ力が注がれていた。このような知見は、障害と生殖の問題を当事者(特に母子)だけへ帰属させようとする従来の医学的観点の特徴として理解することができる。しかし、当事者の周辺には様々な困難があるものの、それらを克服できる力が当事者のなかに眠っていると考え、それを信じて育もうとする論文執筆者たちの姿勢には、医学的観点独自のローカル性が秘められていると考えられ、今後このような医学的観点独自のローカル性に着目した詳細な分析が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象である医学関連分野の論文は数は非常に多く、抽出に困難とかなりの時間を要した。最終的には、2000編程度に絞った論文から無作為抽出した500編を分析対象とすることにした。しかし、2018年6月に発生した大阪府北西部地震で大学図書館に被害が生じ、入手したい論文を外部から取り寄せざるをえなくなった。そのため予定よりも約2ヶ月の遅れをとったものの、図書館の参考資料係の助力にて、入手は無事完了した。年末には有意義な分析結果も得られ、2019年度の学会にて成果を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は産科・周産期・生殖医療に関わる医療従事者へのインタビュー調査を実施する。2018年度の文献分析の結果を踏まえ、聞き取り項目を作成する。しかしながら、新たな知見を浮かび上がらせるため、できるだけオープンな質問ができるよう工夫し、インタビューを実りあるものにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は調査で多方面へ赴くことが予想されるため、次年度使用額は旅費の一部へ加えたい。
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