研究課題/領域番号 |
18K12929
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小笠原 理恵 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (70814375)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイノリティヘルス / 中国帰国者 / 医療社会学 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
2018年度の一番の実績は、2019年1月に大阪大学出版会から、著書『多文化共生の医療社会学:中国帰国者の語りから考える日本のマイノリティ・ヘルス』を上梓できたことである。本著は、博士論文を再構成して書き上げたものであり、本若手研究の足掛かりというべき著書である。これによって、本若手研究の今後のフィールドワークの幅が格段に広がった。また、本若手研究の「戦後日本の保健医療政策を史実に則って明らかにする」という小目的の基盤部分を、本著の執筆過程において、成し遂げることができた。 近隣の関西地域および東海地域において、これからのフィールドワークのための下地を固めた。2019年1月27日には、神戸市のNPO法人が主催する「中国帰国者地域交流会」において、勉強会の講師を務め、『中国帰国者の医療受診から、わたしたちの医療を考えよう』という題名で、中国帰国者家族が多く居住する集合住宅の地域住民に向けて講義を行った。また、2019年2月には、東海地域における「外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト」発足会に招かれ、今後、運営委員として同プロジェクトに携わることになった。このプロジェクトは、中国帰国者2世の方が中心となって始めたプロジェクトで、日本語が不得手な高齢者を対象に、「介護通訳」を持続可能な形で事業化することを目的としている。今後このチャンネルを通じて、東海地域の中国帰国者たちの語りの収集が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2018年度内に国内調査を3回(東海、北陸、九州)行う予定であったが、実施できたのは東海地域の1回と関西近隣のみであった。これは、本格的にフィールドワークを実施する前に、著書『多文化共生の医療社会学:中国帰国者の語りから考える日本のマイノリティヘルス』を上梓することが、調査のより良い進行の大いなる手助けになると考えたからである。また、研究計画書作成時には特任研究員(パートタイム)であったところ、2018年1月に助教のポストを得たことで、当初予定していた設備備品への投資が必要なくなった。フルタイムのポストに就いたことで、本研究の進行に若干の遅れは生じたが、2019年度で十分にキャッチアップできる範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、フィールドワークを積極的に行う予定である。2019年4月には、ニュージーランドで行われる国際学会(IUHPE: International Union for Health Promotion and Education)で口頭発表を行うとともに、現地の移民への健康・医療・福祉対策を視察してくる。ニュージーランドでの調査はもともとの研究計画には含まれていないが、ニュージーランドは移民大国であり、かつ移民に対する保健・医療・福祉政策が進んでいる国である。また、IUHPEという大規模な国際学会で口頭発表をする機会を与えられたこともあり、調査対象国として追加した。 国内における中国帰国者の語りの収集についても、8月-9月を中心に精力的に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書提出時にはパートタイムの特任研究員であったが、2018年1月に助教のポストに就いた。そのことで、当初予定していた設備・物品費への投資が必要なくなった。同時に、フルタイムのポストに就いたことで、研究計画の進行に若干の遅れがでたことは否めない。具体的には、初年度に計画していたフィールド調査を次年度に持ち越すことにした。2019年度は、8月・9月を中心に精力的にフィールド調査を進め、助成金の適正使用に努める。
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