本研究は研究者に女性が少ないなどの高等教育でのジェンダー・バランスの不均衡について、実証的なデータから不均衡の原因を解明し、是正策を提案することを目的としている。そのために主に以下の2つを中心に研究を行ってきた。研究1:「研究キャリア初期におけるジェンダー差の実態」では、キャリア初期にある研究者のキャリア形成の現状と将来展望について実証的な分析を行ってきた。また、研究2:「大学のジェンダー施策の実態と課題」では、男女共同参画などの部署を持つ大学・機関を対象とし、施策の実態把握と課題の抽出を行ってきた。研究最終年度となる2022年度は、研究1に関するインタビュー調査を中心に研究を進めた。新型コロナウイルスの流行の影響により、研究当初予定していた対面での調査実施が難しくなるなか、調査計画の再検討を行い、オンラインによるインタビュー調査を行った。調査では、男女の大学院生やキャリア初期にある研究者の方々にご協力いただき、研究・職業面と生活・家族面でのキャリア展望、障壁、対策、また日本の研究者支援に必要なこと等を聞き取り、貴重なデータを得ることができた。本研究全体としては、研究1では、上記調査にくわえ、2021年度には大学院生の不安やメンタルヘルスとジェンダーに関する統計分析に関する論文の出版ができた。研究2では、2019年度に日本の各大学の女性研究者支援、男女共同参画の部署への郵送調査を行い、結果を2020年度に報告書にまとめることができた。また、本研究を通じて、高等教育におけるジェンダー・バランスの不均衡に関する国内外の先行研究や情報の収集を行い、学協会の男女共同参画推進の事業に関わるなど本研究に関するネットワークづくりと情報入手を進め、さらなる研究発展の見通しを得ることができた。
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