本研究では、日本において男性の家事育児時間が極めて短いことからその要因を明らかにするため、実態把握のためのアンケート調査と、インタビュー調査を実施した。 アンケート調査は宮城県に事業所を持つ企業や自治体の労働組合を通じて、700部配布の401部回収し、共働きの世帯を中心とした宮城県の男性の家事育児の遂行状況についての実態を明らかにした。調査結果からは全国調査に比べて、家事や育児共に遂行量が多いこと、また「見えない家事」についても比較的実施が見られ、地域的な特徴が見られた。調査結果を基本データとして、宮城県男性の家事・育児遂行の量が何によって規定されているのか、重回帰分析を行った。その結果は「宮城県における男性の家事・育児遂行の特徴と規定要因 ―宮城県調査と他調査の比較から―」として発表している。家事については一般に日本では相対的資源説から解釈され、資源が多い方が少ない方に家事をさせる(女性が主婦だったり働く時間が短く収入も低いことが多いため適合的となる)趨勢とは逆で、妻の収入が低い方が夫が家事をするなどこれまでの分析とは異なる結果が出た。 インタビュー調査は高齢者10名と、30代から40代の男性を4名調査した。このうち高齢期男性調査については、「高齢男性の家事実践とライフコース ―仙台市におけるインタビュー調査より―」として論文を執筆している。調査対象の男性たちの多くは、一般的な調査で見られる高齢男性の家事に比べて比較的遂行量が多く、通常の家事に加えて趣味性の高い家事への参入も見られた。今回調査した男性たちは子ども時代に負荷の高い手伝いをしているという特徴が見られ、この男性たちが経験してきた年代固有の生活経験や職業上の経験と家事を関連付けることが可能であった。家事巧者に至るためのライフコース上の特徴を<記憶された家事スキル>と名付けた。これは本研究の独自性と言える。
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