研究課題/領域番号 |
18K12941
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大尾 侑子 学習院大学, 法学部, その他 (50816569)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東アジア / エログロナンセンス / 出版 / 検閲 / 上海 / 支那 / シナ通 / 梅原北明 |
研究実績の概要 |
当該年度は、戦前昭和に軟派出版物を専門に扱っていた出版組織(「珍書屋」)が、検閲が強化されていく1920年代後期において東アジア圏をいかにまなざし、意味づけていたのかを検討した。具体的には雑誌『文芸市場』『カーマシャストラ』『グロテスク』といった雑誌と、その周辺資料を分析の対象として設定し言説分析を行なった。 これまで戦前日本の「エログロナンセンス」という流行語は、都市中間層の享楽的で奢侈的な文化の一側面を理解するための概念として論じられてきた。しかし、近年の研究から「エログロナンセンス」が東アジア圏に広がりを見せたことや、日本と周辺諸国の文化的な相互浸透性が明らかにされつつある。本研究の意義は、こうした先進的な研究に対して地下出版という側面からその具体的な実践を探り、提示したことにある。とくに個人蒐集家所蔵の資料を提供いただいたことで、資料的な新規性も高い。以上は査読論文として「出版界の「異端児」と東アジア 理想郷としての「上海」」にまとめ、論文集『日本近代における〈国家意識〉形成の諸問題とアジア』(勁草書房)として出版された。以上の研究を通じて、これまでのメディア史研究において固有の領域として検討されることの困難であった「地下出版」という領域を開拓する一助となったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文化し、共著の書籍として社会に成果物を公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法は、以下の通りである。上記に示した論文では、単著論文という紙幅の関係から詳細な記述を省いた部分がある。今後は周辺情報を補うとともに、社会学領域だけでなく近代日本文学の領域でも成果を発表し、批判を受けることで質的向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は台湾、中国に出張し現地で調査を行う予定である。
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