研究実績の概要 |
2018年度は、ひきこもり問題から家族主義のあり方を照射するべく、ひきこもり経験者4名、ひきこもり状態にある子をもつ親6名へのインタビュー調査を実施した。ひきこもる子をもつ親のライフヒストリーからは、親の生き方・家族形成が、高度経済成長期の男性稼ぎ主モデルに沿ったものであること、そのような親のライフヒストリーが子との関わりを大きく規定していることが見えてきた。研究成果は、学会誌に投稿し、次年度に査読論文の形で公表したいと考えている。現時点での成果の一端については、「ひきこもり経験にみる家族主義の課題と当事者活動の意義」として『青少年問題研究』(673号、2019年1月刊行)に掲載された。 また、本研究がアプローチの一つとしているライフストーリー研究法についての方法論的検討をおこない、その方法論的特徴と意義を明らかにした。2度の国際学会(4th Conference of The International Alfred Schutz Circle for Phenomenology and Interpretive Social Science, 2018年5月5日, コンスタンツ大学、および The Society for Phenomenology and the Human Sciences, 2018年10月21日, ペンシルヴァニア州立大学)での報告・議論を経て、「ライフストーリー研究と複数の事実性-学知と日常知を問い直す方法論としての可能性」として『知の社会学の可能性』(栗原亘・関水徹平・大黒屋貴稔編著、2019年3月刊行、学文社)に掲載された。これらは本研究の副産物的な成果であるが、本研究の推進に資するものである。
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