研究課題/領域番号 |
18K12949
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
関水 徹平 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (40547634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ひきこもり / 家族主義 / 日本型福祉社会 |
研究実績の概要 |
本年度は研究期間の3年目であったが、家族主義の変容についておおむね順調な研究成果を公表することができた。 ひきこもり状態の息子をもつ家族(父親)へのインタビューにもとづいて、家族にとってのひきこもり問題とは何であり、そのような問題が経験される社会的文脈について考察した論文“Hikikomori” and Dependency on Family: Focusing on father and son relationshipが、日本社会学会の欧文誌 International Journal of Japanese Sociology に掲載されることとなった(2021年3月オンライン公刊)。そこでは外出頻度よりも生活保障をめぐる責任の所在が問題になっていることを論じた。またその背景に日本型福祉社会という家族責任を強化する政策理念とそれに連動する諸政策があることを指摘した。 また、生活保障問題の移行期における表れとして不登校問題とひきこもり問題の連関について、総論的にまとめた成果を、平成30年度愛媛銀行寄付講座・聖カタリナ大学公開講座「風早の塾 新しい時代を生きる:生まれてから老いるまで」にて「ひきこもりからみる日本社会のこれまで・これから」と題して発表した内容が、聖カタリナ大学社会福祉学部編(2021年)において書籍化される(近刊予定)。 また教科書であるが、垣内国光・岩田美香・板倉香子・新藤こずえ編著『子ども家庭福祉―子ども・家族・社会をどうとらえるか』(生活書院、2020年12月刊行)の「特講1 ひきこもりと若者支援」(pp.239-250)において、移行期とその後の困難を公的に支える仕組みが不十分であり、生活保障が家族責任になってしまっている現状を解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
就学・就労に難しさを抱える人たちの生活保障をめぐる家族責任のあり方について、ひきこもり経験者、支援者、家族への聞き取り調査をふまえた研究を進め、論文を発表することができた。その中で、ワークフェア的な所得補償政策、民法における扶養義務の規定、個人単位ではなく世帯単位の支援施策、といった家族にとってのひきこもり問題の前提をなす社会保障制度の問題点を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
社会問題としてのひきこもり問題が生活保障の問題に帰着することがより明確に見えてきたことをふまえて、研究期間を2022年度まで1年延長し、社会的孤立状態にある人たちの生活保障について、とくに家族主義的な福祉レジームという側面から研究を継続する。 また、当人にとってのひきこもり経験と家族にとってのひきこもり経験とを区別しながら、両者が交わる社会的孤立の問題について、国際比較も視野に入れながらさらに研究を進めることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
英語論文の英文校閲費が想定よりも安く済んだため。研究のさらなる推進に必要な図書資料の購入費に充てる。
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