本研究では、社会統計としての障害統計の方法論として、(1)健常者を含む人々の各種障害に対する意識を調べる「主観的方法」と、(2)各種障害を持つ障害者本人の状況に即した「客観的方法」を採用した。研究成果は以下の通りである。 主観的方法に関する成果としては、平成30年度に「社会生活・家庭生活と身体についての意識調査」と題する無作為郵送調査(標本数1000件、有効回答253件、有効回収率25.3%)を実施した。この調査では、33の身体的条件の社会的不利を1から6で評価してもらった。社会的不利の評価が身体的条件により大きく異なることや、多次元尺度構成法で身体的条件のクラスター化などを見出し、学会発表するとともに(2019年障害学会・2021年ISA Forum)、英語論文として投稿し、掲載が決定した(Social Science Japan Journal掲載決定論文)。 客観的方法に関する成果としては、2011年アイルランド国勢調査では、視覚障害や聴覚障害、肢体障害や知的障害など、7種類の障害種別の有無を質問している。これと就労状態の関連を、性別・年齢などを統制したロジットモデルを用いて分析した。障害種別と就労機会における不利の関連の強さには、種別により著しい相違が見られ、学会報告するとともに(2018年障害学会・2018年World Social Science Forum)、英語論文として公刊した(2019年Irish Journal of Sociology掲載論文)。 また同じデータを用いて、ジェンダーと障害の交叉性(intersectionality)について、障害種別にまで踏み込んで分析し、学会報告した(2019年East Asia Disability Studies Forum)。
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