研究課題/領域番号 |
18K12951
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
熱田 敬子 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (20612071)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦時性暴力 / ジェンダー / インターセクショナリティ / フェミニズム / 日本軍性暴力 / ライフストーリー / 植民地主義 |
研究実績の概要 |
2020年度に引き続き、新型コロナウィルスのため渡航しての現地調査が難しい状況だった。そこで、オンラインデータベースや古書販売網を利用して、中国における関連する分野の文献を収集し、分析することを中心に研究を行った。 具体的には、(1)これまでの中国各地の文史資料委員会・党史研究室などが行った調査と公表されている成果の収集と分析、(2)中国で90年代初頭に日本軍性暴力の被害者が名乗り出た際の、当事者が出した手紙などの記録の収集と分析、(3)90年代中国の新聞報道の収集と分析を行った。 また、本研究の理論的背景となる、インターセクショナリティ概念についての先行研究レビューを行った。日本ではこれまで「複合差別」概念と「インターセクショナリティ」概念がこれまで混同されてきた。しかし、マジョリティ女性のフェミニズムから生まれた複合差別概念と、黒人女性などマイノリティ女性の異議申し立てから立ちあがってきたインターセクショナリティ概念は、その来歴も射程も異なる。複合差別論には、インターセクショナリティのような、マジョリティ女性のフェミニズムをマイノリティ女性が批判することへの応答はない。 日本軍性暴力のサバイバーたちは、植民地や侵略・占領といった歴史的状況を背景として、ジェンダーのみならず、人種・民族、階級的な差別を受けてきた。そして日本のマジョリティ女性を中心としたフェミニズムの中でも、日本軍性暴力問題は、周縁化されてきた。サバイバーの異議申し立てと、それに伴って起きた名誉回復運動を理解するためには、インターセクショナリティの視点が不可欠であることをあきらかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査ができないことによる大幅な計画修正を受け、昨年度中に、1年間の研究期間延長を申請した。2021年度中に出版を予定していた書籍について、執筆を依頼した方たちとの打合せ、執筆スケジュール調整の必要があったためである。こちらについては、出版社と調整が済み、2022年の出版を予定している。 これまでの研究成果については、インターセクショナリティ概念と日本軍性暴力研究の関係について、雑誌『現代思想』に依頼論文として投稿した(2021年度中に投稿、2022年4月発刊済み)。
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今後の研究の推進方策 |
2022年は、これまでの研究成果をまとめた書籍を出版する予定である。引き続き現地調査は難しいことを想定し、文献研究と日中の参加者を巻きこんだオンライン研究会をすすめ 、出版につなげる。オンラインインタビューや文献研究を並行して続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行とその長期化の影響により、予定していた現地調査が実施不能となり、研究計画を大幅に組み替えたため。
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