研究課題/領域番号 |
18K12953
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
阿部 純一郎 椙山女学園大学, 文化情報学部, 准教授 (40612916)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 占領期 / 米軍保養地 / 観光 / 余暇・娯楽政策 / 除隊・復員 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の3点である。 【1】米第八軍・第六軍の占領経過報告や米軍発行の日刊紙『Pacific Stars and Stripes』をもとに、戦後米軍が日本の観光ホテル・娯楽場・運動競技場を接収し「米軍保養地」に作り変えていく過程を分析した。特に本年度は、軍内部で兵士のレクリエーション業務を担当したスペシャルサービス局の事業報告をもとに、軍の余暇・娯楽政策の目的と政策内容の変遷を整理したほか、その事業規模を接収施設数や米兵利用者数などの数量データから明らかにした。 【2】占領期の米軍保養地の一例として「竹島レストセンター」(愛知県蒲郡市)を取り上げ、米軍文書や地域関係者の証言・所蔵写真をもとに、蒲郡における保養地建設の目的と経緯、地域住民の反応、米兵の施設利用状況などを分析した。愛知県内には、西日本の物資・人員輸送の拠点として中心的役割を果たした名古屋港や、西日本に駐留する帰還兵及び補充兵の待機場所だった第11補充処(旧岡崎海軍航空隊基地跡)が存在し、竹島レストセンターには上記の施設を利用する米兵に休暇・休養を与え、軍部への不平・不満を抑える役割が期待されていた。 【3】占領期に蒲郡の接収エリア内で撮影された写真(約250枚)について、当時を知る関係者の証言をもとに、撮影場所・撮影時期・対象人物の特定を進めた。また、写真の劣化が進んでいたため、一部は補正のうえスキャニングによるデジタル化をおこなった(継続中)。 なお上記【1】の成果は学会発表し、【2】【3】の成果は学術論文や一般公開の講座で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、かつて米軍保養地が建設された各地域の反応、受入体制を調査すべく、現地での文献資料の収集、当時を知る関係者へのインタビュー調査、写真資料の発掘などを計画していたが、当時接収されたホテルの中には、すでに経営破たんしているもの、経営者・スタッフが大幅に入れ替わり関連資料や関係者の所在がつかめないものが多かった。また、資料の存在は特定できたが、新コロナウイルス感染症の影響により、予定していた現地調査・インタビュー調査が延期され実施できていないものもある。 蒲郡(愛知県)の米軍保養地に関しては、接収時代のホテルを知る元社員や、ホテル支配人の親族へのインタビュー調査を実施し、未公開の所蔵写真を収集することもできたが、それ以外の地域では作業が停滞しており、研究は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず調査の面では、旧米軍保養地での現地調査はいまだ再開の目途が立っていないため、すでに入手した文献・写真資料と関係者へのインタビューの分析を優先的に進める。それとともに、占領期の未公開写真のデジタル化作業も継続的に進めていきたい。次に、本年度発表した占領期の米軍保養地計画、米軍の余暇・娯楽政策に関する論文をまとめ、学会誌に公表する。さらに、次年度は本研究課題の最終年度にあたるため、占領期からベトナム戦争期に作られた米軍保養地が日本の観光産業の発展や都市形成に与えたインパクトや、米軍のレクリエーション事業の政策意図と政策結果について総括し、学会・学術誌などで発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由>新コロナウィルス感染症の影響により、3月以降に予定していた現地調査は延期または中止され、旅費が抑えられた。また、写真資料の整理作業にアルバイトを雇用予定だったが、業者委託に切り替えた結果(費用は「その他」に計上)、費用が低く抑えられた。 <使用計画>現在保留している現地調査、写真資料のデジタル化、学会発表の費用にあてる。
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