最終年度はソーシャルメディア上での小説の執筆過程についてエスノメソドロジー研究の立場から分析を行ってきたもののアウトプット(①年報社会学論集および②2021年『楽しみの技法:趣味実践の社会学』、③2021予定『運動としての大衆文化』所収)を行った。①②では、子どもの読書における人気作品も多く生み出しているソーシャルメディアをフィールドに、そこでの小説投稿およびその作品への感想欄での相互行為に注目し、ソーシャルメディアでの小説執筆の特徴、コミュニケーションを明らかにした。 加えて③では、子どもの読書の人気作品におけるメディアミックス展開で生まれた作品の増加についても分析を行った。学校読書調査を対象に、1955年以降毎年公開されている子どもの読書の人気タイトル上位作品が生まれたメディア環境について(書籍としてははじめに作られたのか、映画作品のノベライズなのか、ゲームのノベライズなのかなど)、コーディングを行い、整理した。 集計とコーディングを通して、2000年以降の子どもの読書の人気作品においてはメディアミックス作品が人気となっていることが明らかになった。その背景について、前年度に行っていた読書環境としての学校についての考察、および学校でのフィールドワークの知見から考察した。子ども読書環境の背景として、一つには読書推進法による子どもの読書の変化(特に「朝の読書」などの読書実践)に伴い、学校の選書制度以外の「好きな本」を自由に選ぶ契機が増え、その結果メディアミックス作品が支持されるようになった。もう一つの背景として、先の背景と相補的なものだが、子どもの読書環境の変化に合わせた、メディアミックス作品が多く刊行されるようになった。つまり、新しい子どもの読書形態に合わせた読書市場が形成されていると考えられる。
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